一般社団法人日本学校保健学会第68回学術大会

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シンポジウム1
人生100年時代を見据えた生活習慣の形成

2022年11月5日(土) 09:35 〜 11:05 LIVE配信第1会場

座長:川畑 徹朗(神戸大学)

[SY1-2] 子どもの体力・運動能力の現状と課題

佐藤 善人 (東京学芸大学教育学部)

キーワード:体力・運動能力の低下、ライフスタイルの変化、アクティブ・チャイルド・プログラム

はじめに
 体力・運動能力の低下問題が指摘されるようになって久しい。ここでは、子どもの体力・運動能力の現状、そして身体活動の意義について述べる。

体力・身体活動の現状
 1985年頃を境に子どもの体力・運動能力は低下傾向にある。例えば、9歳男子児童の50m走の記録が最も速かったのは1987年の9.28秒であったが、2001年には9.84秒まで低下し、2020年は9.61秒である(文部科学省,2014;スポーツ庁,2020)。また、9歳男子児童のソフトボール投げの記録は、1985年は25.13mであったが下がり続け、2020年は19.83mであった(文部科学省,2014;スポーツ庁,2020)。コロナ禍の影響もあり、この状況には歯止めはかかっていない。また、身体活動量の低下も指摘されており、登下校と体育授業を除く、1週間の総運動時間が420分未満の割合は、小学5年生男子児童は52.2%、女子児童にいたっては71.7%であり(スポーツ庁,2021)、不活発な子どもが増加している。

身体活動の意義
 基礎的な動きは年齢を重ねれば獲得されるものではなく、子どもは多様な動きを経験し、その結果として、様々な動きを獲得するのであり、基礎的な動きは幼少期に獲得されやすい。しかしながら、子どものライフスタイルの変化や、保護者の身体活動に対する意識の変化などにより、運動遊びやスポーツをしない子どもが増加しており、獲得すべき動きが身についていない子どもは少なくない。子ども時代の身体活動は、大人になってからの身体活動や健康に強く影響を及ぼすと言われている(Blair et al.,1989)。加えて、身体活動は、子どもの心理社会面の成長にポジティブな効果が期待されている(上地,2015)。これらから、子どもが身体活動を積極的に実施できる環境づくりを、大人が責任をもって行うことが求められている。

現状を変える方策 -アクティブ・チャイルド・プログラムの可能性-
 日本スポーツ協会では、子どもが発達段階に応じて身につけておくことが望ましい動きを習得する運動プログラムとして、アクティブ・チャイルド・プログラムの普及啓発に力を入れている。このアクティブ・チャイルド・プログラムの必要性は、第三期スポーツ基本計画にも明記され、現在では幼稚園や小学校、地域における各種スポーツクラブにおいて実践が広がりつつある。午後のセッションにおいて、その詳細を述べる。