一般社団法人日本学校保健学会第68回学術大会

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シンポジウム3
教科としての「保健」のさらなる改善に向けて~注目される課題と提案~

座長:野津 有司(筑波大学)、岩田 英樹(金沢大学)

[SY3-4] 安全に関する課題の変遷とこれからの保健の内容

渡邉 正樹 (東京学芸大学)

キーワード:安全、課題、変遷

 保健における安全に関する内容は、現在小中高校でそれぞれ「けがの防止」「傷害の防止」「安全な社会生活」として扱われている。保健で扱われる安全の内容は、本来は外傷の防止と外傷発生時の対処(応急手当)として位置づいている。その背景には、日本人の死因の上位に不慮の事故があること、特に道路交通事故は1970年に年間死者数が16、765人に達したことから、当時保健においては交通事故防止に重点が置かれていた。しかし阪神淡路大震災(1995年)を受けて中学校の「傷害の防止」に防災が加わった。また2005年に下校中の小学生殺害事件が連続したことによって防犯に注目が集まり、平成10年小学校学習指導要領からは小学校の「けがの防止」に防犯が加わった。このように不慮の事故防止から安全全般へと視点が移ってきた。
 ところで平成29年学習指導要領ではカリキュラムマネジメントの重要性が述べられており、安全教育(防災を含む)もその対象である。特に防災は理科、社会科など他教科や特別活動でも扱われており、保健での内容の独自性を改めて検証する必要があるだろう。また2021年から始まっている「生命(いのち)の安全教育」は国の骨太方針で取り上げている性犯罪・性暴力防止の柱の一つであり、性に関する課題ではあるが、内容はむしろ防犯と言える。教育課程における安全教育の重要性は言うまでもないが、今後保健がどの範囲まで扱うのかが検討課題と言えるだろう。