国際開発学会第35回全国大会・人間の安全保障学会第14回年次大会

講演情報

ポスター発表

ポスター

2024年11月9日(土) 09:00 〜 13:00 メディアラウンジ (外濠校舎1階)(JASID) (外濠校舎1階 メディアラウンジ )

09:00 〜 13:00

[1Z110] 国際労働移動における国連機関の役割についての比較研究

*李 千晶1 (1. 国際協力機構 緒方貞子平和開発研究所)

キーワード:国際労働移動、安全で秩序ある正規の移住のためのグローバル・コンパクト、インドネシア、ILO、IOM

国際労働移動研究において人間の安全保障の観点から「安心・安全」な移動回廊の確立が重要視されている。本研究では「安全で秩序ある正規の移住のためのグローバル・コンパクト(GCM)」採択前後の2014年~2023年の国際労働機関(ILO)と国際移住機関(IOM)の公式文書を対象とした体系的文献レビューを実施し、インドネシアにおける取り組みに焦点を当て、以下の問いを探求する:  
① ILOとIOMは、人間の安全保障の視点から、インドネシアにおける「安心・安全」な労働移動回廊の確立にどうアプローチしているか?
② 「安全で秩序ある正規の移住のためのグローバル・コンパクト(GCM)」採択(2018年)前後で、労働者の保護と能力強化に関する政策アプローチにどのような変化があったか?
③ 国家、地域、コミュニティレベルでの具体的な提言や成果は、個人の保護と権利保障の観点からどのように記述されているか?

分析の結果、両機関の成り立ちや任務の違いが明確となった。第一に、ILOは世界的共通のアジェンダとして提言を行うアプローチを取る一方で、IOMは個別プログラム活動を通じたより多様なアプローチを採用していた。第二に、人材採用のあるべき方法について、ILOの「公正な採用」は労働者の権利ベースであるが、IOMの「倫理的な採用」は雇用主、移民労働者、リクルーターのそれぞれの立場からの公平性を併存して考慮していた。第三に、提言の実現について、ILOは国際基準に基づくモニタリングを実施した結果として得られた専門的知見を提供するが、IOMは政府と連携して、プログラム活動の実施を通じた実現を目指している。ILOは後に策定されたGCMの目標と既に整合していると主張しており、GCM採択後に変化はない。一方で、IOMは、GCM策定後はその目標に積極的に適応していることを示唆している。
 
 まとめると、両機関とも「安全で秩序ある正規の移住」の実現という共通の目標に向けての取組みが行われているものの、ILOの規範的アプローチとIOMの実証的アプローチの違いが示唆され、両機関の協働が重要であると言える。

パスワード認証
報告論文の閲覧にはパスワードが必要です。パスワードを入力して認証してください。

パスワード