国際開発学会第35回全国大会・人間の安全保障学会第14回年次大会

講演情報

一般口頭発表

若者のエンパワーメントと社会改革:教育、職業訓練、アイデンティティ形成

2024年11月10日(日) 12:45 〜 14:45 F301 (富士見坂校舎 301)

座長:佐藤 峰(横浜国立大学)

コメンテーター: 佐藤 峰(横浜国立大学), 土田 千愛(東京大学)

13:15 〜 13:45

[2A203] ポストアパルトヘイト南アフリカにおける若者のアイデンティティとエージェンシー形成
ークワクワ地域の若手起業家の事例

*近江 加奈子1 (1. 国際基督教大学大学院アーツ・サイエンス研究科)

キーワード:エージェンシー、アイデンティティ、若者、南アフリカ、起業家精神

若者人口が多いアフリカ諸国では、農村出身の若者の都市移住による都市人口の過密化、それに伴う都市と農村の社会経済格差の拡大が様々な社会不安を引き起こしている。南アフリカでは、恒常的に若者が都市部へ流入する中、若者の非就業率が62%(2023年時点)と高止まりし、Rhodes Must Fall学生運動で見られたように若者の社会に対する不満が顕在化している。南アフリカの黒人の若者は、アパルトヘイトが撤廃された後に教育を受けて育ったBorn Free Generationと言われ、「虹の国」の発展の牽引役となることを期待された。しかし現実は、根深い人種間格差、都市と農村間格差、ジェンダー不平等など、若者は複数の社会的不平等に晒され、様々な葛藤に直面している。そのような社会経済環境においても、農村部の「低開発」状況にある地域社会の発展に貢献したいと、農村地域で活動する若手起業家たちがいる。彼・彼女らはどのような理由付によってそのエージェンシーを醸成したのであろうか。エージェンシーの涵養には、いくつかの要因が考えられるが、基礎的な要素として、個人のアイデンティティ形成プロセスが関わることが示唆されている。若者のアイデンティティ形成に関する従来の社会学的研究の多くは、人種、ジェンダー、階級などの社会的分類が個人のアイデンティティ形成に及ぼす影響を分析し、社会的不平等とアイデンティティ形成の関係を論じてきた。しかし、若者のアイデンティティ形成過程と、エージェンシーの醸成との関連性については十分に研究されていない。本研究では、エージェンシーの醸成に関わる一つの重要な要素としてアイデンティティに着目し、その形成過程をライフストーリーアプローチを用いて分析した。具体的には、南アフリカのフリーステート州クワクワ地域において、農村回帰した若手起業家を事例に、彼・彼女らのライフストーリーのナラティブ分析を行った結果を報告する。

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