国際開発学会第35回全国大会・人間の安全保障学会第14回年次大会

講演情報

一般口頭発表

若者のエンパワーメントと社会改革:教育、職業訓練、アイデンティティ形成

2024年11月10日(日) 12:45 〜 14:45 F301 (富士見坂校舎 301)

座長:佐藤 峰(横浜国立大学)

コメンテーター: 佐藤 峰(横浜国立大学), 土田 千愛(東京大学)

14:15 〜 14:45

[2A205] 人身取引事例に見る人間の安全保障と国家の安全保障の相剋ー
タイにミャンマーから越境する子どもの安全保障と人間開発

*齋藤 百合子1 (1. 大東文化大学)

キーワード:人身取引、人間の安全保障、子ども移民、教育、タイ

人身取引は、国際組織犯罪条約に付帯する人身取引議定書(2000)で国際組織犯罪と定義されてから、国際協調・国際協力が活性化し、四半世紀が経とうとしている。人身取引対策は人間の安全保障を促進するものか、それとも国家の安全を保障するものなのかは、人身取引議定書策定前後から議論があった。近年は越境する被害者(潜在被害者を含む)の安全保障と国境管理及び移民・難民(避難民)管理をめぐって各国政府機関や市民団体、住民らがそれぞれの主張を展開し、滞在国の正規の在留資格を持たない移民・難民(避難民)らは脆弱な立場に置かれつつある。
 本研究は、2023年にタイ中部アントーン県で、ミャンマーからの126人の子どもの教育を担っていた某小学校で、当初人身取引事件として校長が逮捕された事件(後に人身取引としての告発は取り下げ)の事例研究である。
 まず、タイの人身取引対策の経緯を、主に日本と米国のタイ政府への国際協力を概観し、その上で、本事件が人身取引事案として警察から告発されたことを考察する。そして本事件が、紛争状態にある隣国ミャンマーからの教育を目的とした越境する子ども(多くが無国籍)であること、タイは「万人のための教育」を推進してきたことを踏まえ、人間(特に子ども)の安全保障と人間開発と国家安全保障として厳格化する国境管理の相剋を考察する。さらにタイにおけるミャンマーから戦禍を逃れる越境者(特に子ども)の課題がタイの移民政策と少子高齢化と関連して議論されつつあること、越境者急増の背景である長引くミャンマー国内の紛争解決へのASEANを含む近隣諸国の対応などの今後の課題も提示する。

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