国際開発学会第35回全国大会・人間の安全保障学会第14回年次大会

講演情報

一般口頭発表

持続可能な経済発展と倫理的ジレンマ

2024年11月10日(日) 12:45 〜 14:45 F305 (富士見坂校舎 305)

座長: 澤田 康幸(東京大学)

コメンテーター: 澤田 康幸(東京大学), 吉田 綾(国立環境研究所)

13:45 〜 14:15

[2E207] 共有資源管理における倫理と経済発展

*鬼木 俊次1、ダギス カデルベック2、坂本 剛3 (1. 国際農林水産業研究センター、2. モンゴル生命科学大学、3. 中部大学)

キーワード:共有自然資源管理、道徳、社会規範、牧畜、経済学

共有自然資源は途上国の人々の生活の基盤となっているが、経済発展とともに荒廃しやすい。多くの共有資源は現地の人々の倫理によって持続的に利用されているが、経済発展や都市化によってこうした共有資源をささえてきた人々の倫理が変容するという問題がある。モンゴルの牧畜民には、季節によって共有の牧草地を使い分ける社会規範があり、それが数千年におよぶ草原の持続性を可能にしてきた。しかし、近年の都市部の急速な経済発展によって、人々が共有する道徳すなわち倫理が変化し、草原の利用に関する規範が崩壊しつつある。本研究は、モンゴルにおける経済発展が牧畜社会の倫理とどのように関係しているのか、また、それが草原の利用規範とどのように関係しているのかを探る。我々は、市場経済が発展している都市部に近い4つの地域と、モンゴルの遠隔地にある4つの地域で480の牧畜世帯のランダムサンプリング調査を実施し、そのデータを用いて道徳的判断の内生変数を含むプロビットモデルを推定した。その結果、都市部へのアクセスは牧畜民の道徳的判断と相関し、それは草原利用の規範とも関連していることがわかった。都市部に近い地域では、リバタリアニズムや結果主義(功利主義)の倫理観を持つ牧畜民が多く、遠隔地では義務論や共同体主義の人々が多い。これらは、モンゴルの牧畜民の道徳的価値観が共有草地の管理方法に影響を与えること、そして経済発展が道徳的価値観を変化させ、持続可能な共同資源管理をより困難にしていることを示している。政策立案者は、人々の倫理の現状を正確に把握し、その変化に対応して共有資源保全の規範を形成するのに最適な政策を選択する必要がある

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