第54回(2023年度)日本看護学会学術集会 大阪

講演情報

ポスター

ポスター8 群 看護の質向上のための取組み③

2023年9月30日(土) 09:00 〜 10:00 ポスター会場 (イベントホール)

座長:山中 晶子

[ポスターO-8-5] 外来化学療法を開始する消化器系がん患者への下肢筋力トレーニングプログラムが与える身体的効果とQOL への影響

唐澤 奈津子, 渡邊 紗織, 佐藤 美和 (富士吉田市立病院)

キーワード:外来化学療法、下肢筋力トレーニング、ADL 低下予防

【目的】A 病院において外来化学療法を開始する消化器系がん患者に対し、Activities of Daily Living(ADL)低下予防を目的に低負荷の下肢筋力トレーニングプログラムを導入し、その身体的効果およびQuality of Life(QOL)への影響について明らかにすることである。【方法】先行研究のNEXTAC-ONE 試験を参考にプログラムを設定し、介入期間は各治療間隔に合わせた約3 ヶ月とした。主治医、理学療法士、管理栄養士、看護師で行い、下肢筋力トレーニングは1 日2 セットを目標に指導し日誌記載により実施率を算出した。評価は開始前中後の3 回実施し、QOLはEuropean Organisation for Research and Treatment of Cancer(EORTC)Quality of Life Group 開発のEORTC QLQ - C30 質問紙を使用し集計・評価を行った。身体的効果について、ウィルコクソン検定(p < 0.05 有意差あり)とスピアマン順位相関係数を使用し、開始前後の測定値に対し有意差の有無及び相関係数を算出し評価した。対象者に研究参加及び中断の自由意思や、不利益を与えない事、データ利用は本研究に限る事について同意を得た。有害事象発生予防のため管理栄養士による栄養指導、理学療法士によるトレーニング設定と指導を行い、再入院や病状悪化時は中止とした。【結果】本プログラムを完遂した10 名は男性9 名、女性1 名、年齢の中央値は72.5 歳であった。身体機能においてトレーニング開始前後で歩行速度上昇(p=0.036)、下肢筋力向上(p=0.041)に有意差を認めた。また、トレーニング実施率上昇に対する握力増強および歩行速度上昇について、相関係数がrs=0.679、rs=-0.739 であり強い相関を認めた。QOL指数は開始前と同等レベルで経過し、身体症状の出現や増強で特異的に低下した。【考察】本プログラムの実施により歩行速度上昇、下肢筋力向上、握力増強が認められ、トレーニングの継続性と身体機能向上の相関が認められたことから、ADL 低下予防に効果的に影響することが示唆された。一方でQOL への明確な効果は見出せなかった。今回、苦痛症状の増強がQOL 低下に直結していたことから、症状を観察、コントロールし緩和に努めることが重要である。