日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS18] 古気候・古海洋変動

2022年6月3日(金) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (30) (Ch.30)

コンビーナ:長谷川 精(高知大学理工学部)、コンビーナ:岡崎 裕典(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)、山本 彬友(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)、コンビーナ:山崎 敦子(九州大学大学院理学研究院)、座長:岡崎 裕典(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)、長谷川 精(高知大学理工学部)

11:00 〜 13:00

[MIS18-P18] 米国グリーンリバー湖成層コアを用いた始新世前期における十年~百年スケール気候変動と太陽活動の気候影響の検証

*百瀬 弘基1長谷川 精1朝日 博史1隈 隆成2、Jessica Whiteside3 (1.高知大学 理工学部、2.名古屋大学、3.ソウサンプトン大学)

キーワード:太陽活動の気候影響、湖成年縞、始新世

完新世や最終氷期の気候変動には十年~百年スケールの周期性が見られ,宇宙線生成核種(14Cや10Be)の生成量変動との相関が見られることから,太陽活動の周期変動が地球の気候変動に影響を及ぼしている可能性が指摘されている(約11年周期のSchwabe cycleや約88∼120年のGleissberg cycle,約208年周期のde Vries cycleなど; e.g., Steinhilber et al., 2012; Adolphi et al., 2014; Soon et al., 2014)。ペルム紀の樹木化石年輪の解析結果からも報告されているように(Ludwig et al., 2017),地質時代を通した過去にも11年周期の太陽活動変動が存在したことが示唆されている。しかし,第四紀以前に十年~百年スケールの変動を解析可能なアーカイブは限られており,中新世後期(Kern et al., 2012)や始新世中期(Lenz et al., 2010),白亜紀前期(Hasegawa et al., submitted)の年縞堆積物により復元された例を除いて示されていない。
本研究では、米国中西部に広く分布する始新世前期の湖成層(グリーンリバー層)のコアを対象とし,当時の十年~百年スケール気候変動の復元を試みた。研究に用いた試料は,ユタ州北東部で採掘されたP4コア(ca. 49 Ma)である。同コアには1年ごとの夏季・冬季の縞を記録する年縞が保存されており,約5cm区間(約1000年分)の薄片試料を蛍光顕微鏡で撮影し,夏季の藻類有機物量を反映した蛍光強度の変動を解析した。これまでに365年分の夏季藻類生産量変動に対して周期解析を行った結果,約11年および約80年の周期性が見られ,現在の太陽活動変動に類似した周期性が見られることが分かった。今後はさらに解析を進めデータを増やすことで,始新世前期にも太陽活動が気候に影響していたかどうかの検証を試みる。