日本地球惑星科学連合2023年大会

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現地ポスター発表

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[O-06] 高校生ポスター発表

2023年5月21日(日) 13:45 〜 15:15 現地ポスター会場 (幕張メッセ展示ホール8)

コンビーナ:原 辰彦(建築研究所国際地震工学センター)、道林 克禎(名古屋大学 大学院環境学研究科 地球環境科学専攻 地質・地球生物学講座 岩石鉱物学研究室)、久利 美和(気象庁)、紺屋 恵子(海洋研究開発機構)

現地ポスター発表開催日時 (2023/5/21 13:45-15:15)

13:45 〜 15:15

[O06-P74] 土壌に含まれる電解質を利用した土砂災害予測装置の開発

*石川 尚樹1、小浦 晴人1、湯浅 健司1 (1. 神奈川県立生田高等学校)

キーワード:土砂災害、土壌、電解質、電流


近年、大雨を原因とする土砂災害による被害が増加している。これは、土砂災害の前兆は可視化が難しく、視認できたときにはすでに手遅れであることが多いためである。また、気象レーダーを用いた予測方法もあるが、主に降水量に頼っており、地質的な要因によって想定より早く土砂災害が起こることもある。土壌と降水量の2つに着目した土砂災害予測装置を作製することはできるのか研究を行った。

 本研究では、土壌と降水量を結びつけるものとして、土壌中に含まれる電解質に着目した。土壌が水分を含むと土壌中の電解質が溶け出し、電圧をかけると電気が流れると考えられる。そこで、降水量(含水量)の変化によって電流の値が変化し、土砂災害を予測する事ができると考えた。

 はじめに、土壌の含水量によって電流の値が変化するのかを調べた。関東ローム層起源と考えられる本校テニスコートわきの西向き29°斜面から土壌を採取し、2.0mLずつ蒸留水を加えながら予測装置の試作器を用いて16Vで電圧をかけ、電流の値を計測した。

 次に、雨水での計測を行った。蒸留水を用いた実験と同じ土壌で2.0mLずつ雨水を加えながら予測装置の本作器を用いて20Vで電圧をかけ、電流の値を計測した。この実験で用いた雨水は本校屋上で採取し、試作器と本作器の構造は同じである。
雨水での計測から、雨水でも蒸留水と同じように電流の値が変化することがわかった。斜面での土砂崩れと電流の変化について実験を行った。本校テニスコートわきの西向き29°斜面に装置本作器を設置し、電極付近に本校屋上で採取した雨水を10mLずつ加え、20Vの電圧をかけながら電流と斜面の様子を測定した。

 実験後数ヶ月が経過したときに電極部分が錆びていることが確認できた。電極部分が錆びると計測に影響を及ぼす可能性がある。錆びない素材として白金Ptや炭素(黒鉛)Cがあるが、白金は高価で炭素は折れやすく装置の電極に用いることは難しいと考えた。また、現段階では装置を自然の斜面に設置することを想定しているため、環境に与える影響を考える必要がある。この実験では、銅Cu・アルミニウムAlを電極に用いて、身近な電解質である塩化ナトリウムNaClを用いた実験を行った。

 はじめに、銅を電極に用いた塩化ナトリウム水溶液NaClaqの実験を行った。10%NaClaqを銅板を用いて15Vで電気分解した。電流を計測しようとしたが、装置の不調によりできなかった。次に、黄褐色の沈殿を調べた先行研究(小川, 2017)に従って寒天溶液の実験を行った。

 銅を電極に用いたNaClaqの実験と同じ濃度の10%NaClaq200mLあたりに、フェノールフタレイン4滴、2gの寒天を入れ、シャーレに分けて固めたものに銅板を用いて15Vで電気分解をした。寒天により、イオンが移動するのを遅らせ、段階ごとの反応を観察した。

 アルミニウムを電極に用いたNaClaqの実験を行った。10%NaClaqをアルミニウム板を用いて10Vで電気分解した。電流を計測しようとしたが、装置の不調によりできなかった。

 次に、アルミニウムを電極に用いたNaClaqの実験と同じ濃度の10%NaClaq200mLあたりに、フェノールフタレイン4滴、2gの寒天を入れ、シャーレに分けて固めたものにアルミニウム板を用いて10Vで電気分解をした。

 今後は、土や土粒子の密度と崩れやすさの関係や、それによる地域ごとの装置のデータの土砂災害の予測、環境に配慮した土砂災害予測装置の開発に取り組みたい。

引用文献 
·小川 香(2017)電気分解で生成するCu₂Oの定量と生成過程. 奈良県教科等研究会理化学会会報,56.

附記 本研究は、「第10回 高校・高専気象観測機器コンテスト」1次審査通過により、一般財団法人WNI 気象文化創造センターより支援を受けて実施したものである。