日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS08] 気象学一般

2024年5月27日(月) 13:45 〜 15:00 展示場特設会場 (1) (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:那須野 智江(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)、久保田 尚之(北海道大学)、Sugimoto Shiori(JAMSTEC Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology)、清水 慎吾(国立研究開発法人防災科学技術研究所)、座長:那須野 智江(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)、久保田 尚之(北海道大学)

14:15 〜 14:30

[AAS08-03] 線状降水帯を起こす梅雨前線帯の低気圧とその環境場の特徴

★招待講演

*栃本 英伍1,2新野 宏2、廣川 康隆1 (1.気象研究所、2.東京大学大気海洋研究所)

キーワード:線状降水帯、低気圧、梅雨

線状降水帯はしばしば梅雨前線帯で発生・発達する低気圧によって引き起こされることがある。したがって、線状降水帯を起こす低気圧の特徴を明らかにすることは、線状降水帯の発生メカニズムや発生環境場を理解するためにも重要である。一方で、全ての梅雨前線帯の低気圧が線状降水帯を発生させるわけではなく、線状降水帯を起こす低気圧と起こさない低気圧が存在するが、両者の特徴の違いは十分に理解されていない。そこで本研究は、長期客観解析データ(1989-2020年)から九州で線状降水帯を起こす梅雨前線帯の低気圧(LS-BFD)と起こさない低気圧(NLS-BFD)を抽出し、両者の特徴の違いをコンポジット解析により調べた。
コンポジット解析の結果、線状降水帯発生直前の時刻においてLS-BFD, NLS-BFDとも九州の南西海上で大気下層に強い水蒸気フラックスが見られた。両者を比較すると、LS-BFDの方が強い傾向にはあるが、統計的に優位な違いは見られなかった。一方、下層水蒸気フラックス収束に着目すると、線状降水帯発生の約12時間前から発生数時間後にかけて、大気下層に優位な差が見られた。
また、大気の不安定度を比較するために対流有効位置エネルギー(CAPE)およびエントレインメントを考慮したCAPE(E-CAPE)のコンポジット場を調べた。その結果、LS-BFDとNLS-BFDのコンポジットでCAPE, E-CAPEとも九州の西方海上で大きな差が見られたが、E-CAPEの方が線状降水帯の発生した九州付近に高い値が限定されており、より優位な差が見られた。一方、線状降水帯発生6条件の一つであるストームに相対的なヘリシティのコンポジットでは、LS-BFDとNLS-BFDに大きな差は見られなかった。