日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-DS 防災地球科学

[H-DS10] 防災リテラシー

2024年5月27日(月) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:高橋 誠(名古屋大学大学院環境学研究科)、木村 玲欧(兵庫県立大学)


17:15 〜 18:45

[HDS10-P11] 社会調査による災害への備えの現状~防災リテラシーへの提言

*木村 玲欧1,2、中澤 幸介1,3、李 泰榮2、佐藤 翔輔4、松川 杏寧1,2、辻岡 綾2、大塚 理加2 (1.兵庫県立大学、2.防災科学技術研究所、3.新建新聞社、4.東北大学)

キーワード:オンライン質問紙調査、災害への備え、自助、世論調査

防災を実施する主体として、自助、共助、公助の3つがあげられる。自助は、個人や家庭での取り組みのこと、共助は、自治会や地域社会での取り組みのこと、公助は、行政などの公益事業体の取り組みのことである。その中でも、災害発生直後に命を守り、適切な初動対応をするためには、自助が重要である。そこで、災害への備えの現状を明らかにするために、アンケート調査によって、自助による災害への備えの現状を明らかにした。
 本研究は、国立研究開発法人防災科学技術研究所と東北大学災害科学国際研究所が2023年11月に実施した社会調査データを用いた。調査対象地域は、日本を7エリア(北海道・東北、関東、中部、近畿、中国、四国、九州・沖縄)にわけて、各エリアから300サンプル、合計2100サンプル(有効サンプル n =1599)を対象にしている。調査対象者は、18歳から99歳までである。年齢を、10代~60代以上の6年代にわけて、各年代と性別ごとに調査対象者数が均等に割り付けられるようにした。
 「あなたの家で、災害に対する備えとして実行されているものはありますか。当てはまるものをすべて選んでください」と尋ねた。回答が多かった順に、「停電時に作動する足元灯や懐中電灯などを準備している」(38.4%)、「食料や飲料水、日用品などを準備している」(35.0%)、「近くの学校や公園など、避難する場所を決めている」(31.2%)となり、この3項目が3割以上の回答であった。逆を言えば、日本に居住する人の6割以上は、このような基本的な物品の備え、基本的な避難行動すら決まっていないことがわかった。この結果は、2022年9月に実施された最新の世論調査である「防災に関する世論調査」の各項目の回答率よりも低かった。郵送法で回収率が59,7%で回答者の約半分が60代以上である世論調査よりも、日本における防災の現実を反映しているものと考えることができる。
 また、被災経験があるか、ハザードマップなどの内容を理解しているか、災害が10年以内程度にやってくるなどの切迫性を感じているかによってクロス集計を行った。その結果、地域のハザードについて、ハザードマップの内容についてまで理解しているといった「地域のハザードを理解している人」の方が、様々な備えを実施していることがわかった。特に、「防災訓練に積極的に参加している」(全体4.5%、ハザード認知が高い12.6%)、「近所の高齢者・要支援者の存在を把握している」(全体4.5%、ハザード認知が高い12.6%)などの、地域における共助にもつながる備えを行っていることがわかった。