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[HDS11-13] 2024年能登半島地震津波における富山湾での海底地すべりの影響
キーワード:富山湾、海底地すべり、数値シミュレーション、2024年能登半島地震津波
2024年1月1日午後4時10分、能登半島で発生したM7.6の地震に伴って津波が発生し、珠洲市や能登町で約5mの津波痕跡高が観測された。また、地震発生より約3分後、震源域より80km以上離れた富山湾奥の神通川河口に設置された検潮所でも約80cmの津波が観測された。当初、気象庁では、富山県の津波到達予測時刻は午後4時20分としてたが、その予測よりも明らかに早い時間で津波が到達した。この津波に対しては、複数の研究者により、地震断層モデルによる数値シミュレーションが試みられているが、3分で到達した津波を再現することができず、海底地すべりなどの地震とは異なる波源の可能性が指摘されている。
地震後、富山湾の水深800m~1000m付近の深海に設置されたカニ籠の流出や、定置網の損傷など、富山湾の広い範囲で海底地形変化の影響が漁業関係者より報告された。さらに、地震後に海上保安庁による海底調査が行われ、海底谷での斜面崩壊の痕跡が確認された。これらの状況は、富山湾の広い範囲で海底地形変化が発生していることを裏付けていると考えられる。しかしながら、どの範囲での海底地すべりが津波を励起したのかという具体的な検討は行われていない。そこで本研究では、富山湾の海底地形を参考に、複数の海底地すべりシナリオを仮定し、地すべり津波統合モデル(二層流モデル)を用いて、津波波形の再現シミュレーションを試みた。数百ケースのシナリオを試行錯誤的に検討した結果、神通川河口約2~3km沖合と富山新港約1~2km沖合の海底谷で同時多発的に海底地すべりを発生させることで、富山および、伏木検潮所の波形の傾向を非常によく説明できることが分かった。さらに、雨晴海岸でCCTVカメラにより撮影された津波の襲来状況とも調和的であることが確認された。一方で、阿尾地区から岩瀬浜までの区間で実施した津波痕跡高調査との比較では、上記の海底地すべりのみでは、若干の過小評価となっていたことから、富山湾西側にある氷見漁港の沖合においても海底地すべりを考慮したシナリオの検討を行い、痕跡高との整合性を確認した。以上により、2024年能登半島地震において富山湾で観測された到達時間の早い津波は、同時多発型の海底地すべりによって励起されたものであることが示された。
地震後、富山湾の水深800m~1000m付近の深海に設置されたカニ籠の流出や、定置網の損傷など、富山湾の広い範囲で海底地形変化の影響が漁業関係者より報告された。さらに、地震後に海上保安庁による海底調査が行われ、海底谷での斜面崩壊の痕跡が確認された。これらの状況は、富山湾の広い範囲で海底地形変化が発生していることを裏付けていると考えられる。しかしながら、どの範囲での海底地すべりが津波を励起したのかという具体的な検討は行われていない。そこで本研究では、富山湾の海底地形を参考に、複数の海底地すべりシナリオを仮定し、地すべり津波統合モデル(二層流モデル)を用いて、津波波形の再現シミュレーションを試みた。数百ケースのシナリオを試行錯誤的に検討した結果、神通川河口約2~3km沖合と富山新港約1~2km沖合の海底谷で同時多発的に海底地すべりを発生させることで、富山および、伏木検潮所の波形の傾向を非常によく説明できることが分かった。さらに、雨晴海岸でCCTVカメラにより撮影された津波の襲来状況とも調和的であることが確認された。一方で、阿尾地区から岩瀬浜までの区間で実施した津波痕跡高調査との比較では、上記の海底地すべりのみでは、若干の過小評価となっていたことから、富山湾西側にある氷見漁港の沖合においても海底地すべりを考慮したシナリオの検討を行い、痕跡高との整合性を確認した。以上により、2024年能登半島地震において富山湾で観測された到達時間の早い津波は、同時多発型の海底地すべりによって励起されたものであることが示された。