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[MAG34-P04] 森林源流域から下流域にかけての河川水中で水質が溶存態放射性Csの動態に与える影響
キーワード:溶存態Cs-137 、イオン競合性、有機物分解、溶出
福島第一原発事故により大気中に拡散された後、森林に沈着した放射性セシウムCs-137は、森林源流域において河川に移行し、上・中・下流域へと運搬される中で、主に有機物分解によって有機物中から、または他の溶存陽イオンとのイオン競合性によって土壌粒子中から、河川水中に溶存態Cs-137として溶出すると考えられている。実際の河川において、これら二つの溶出経路の寄与は河川水の水質によって大きく影響を受けて決定されると考えられるが、水質に着目して河川の源流域から下流域にかけての両溶出経路の寄与を明らかにする研究はされていない。そこで本研究は福島県山木屋地区の森林源流域から口太川の下流域にかけて見られる溶存態Cs-137の溶出経路を考察するため、渓流水・河川水の水質分析を行った。その結果、イオン競合性による溶出に関与するカリウムイオン(K+)と有機物分解により溶出する溶存有機炭素(DOC)の濃度はともに溶存態Cs-137濃度と有意な相関を示し、源流域では溶存態Cs-137の両溶出経路の存在が確認された。ここで、K+濃度と比較して、DOC濃度との相関は全体としては低かった。しかし、K+濃度は湧水地点からの距離と相関のある有意差が地点間で見られたことを考慮すると、源流域の中でも湧水地点に近くK+が極めて低濃度である地点では、有機物分解による溶出の寄与が十分に有意であるとみられた。一方で、K+濃度が源流域よりも有意に高い河川上・中・下流にかけては、イオン競合性による溶出の寄与が大きくなることが示唆された。このようにして、K+濃度に代表される河川水の水質に影響を受けた、森林源流域から河川下流域にかけての溶存態Cs-137の溶出動態の変化を明らかにした。