日本地球惑星科学連合2024年大会

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[O-08] 高校生ポスター発表

2024年5月26日(日) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:原 辰彦(建築研究所国際地震工学センター)、道林 克禎(名古屋大学 大学院環境学研究科 地球惑星科学系 岩石鉱物学研究室)、久利 美和(文部科学省)、紺屋 恵子(海洋研究開発機構)

13:45 〜 15:15

[O08-P11] 遠州灘の漂着軽石を探るⅡ ~白色軽石とカワゴ平軽石との比較~

*川崎 琉菜1、*鈴木 仁緒1、竹内 凌真1、樋川 晄太郎1、藤島 智希1 (1.静岡県立磐田南高等学校)

キーワード:軽石、火山、漂着

1 動機・目的
 先行の研究において,2021年に遠州灘にて採取した灰色の軽石を調査し,福徳岡ノ場火山が起源であると明らかにした[1].同時期に複数の種類の白色の軽石を採取したが,これらの起源は不明である.そこで,本研究では白色の軽石の形状や鉱物,火山ガラスに着目し,起源を明らかにすることを目的とする.又,予備実験において白色の軽石の有色鉱物組成と,起源の候補であるカワゴ平軽石,姶良大隅軽石,神津島天上山軽石,新島向山軽石の文献に示されている組成を比較すると,白色の軽石に含まれる有色鉱物の種類はカワゴ平軽石と似ていることが分かった.

2 仮説
 静岡県東部のカワゴ平火山は過去に軽石を噴出した.その河口である狩野川で2023年7月に採集した軽石の形状が,遠州灘にて採集した複数種ある白色の軽石うちの1種と似ていた.そこで,この白色の軽石がカワゴ平軽石であると仮定する.

3 方法
2021年12月に遠州灘沖にて採集した白色軽石を,外見の違いにより11種類に分類し,カワゴ平の軽石に外見が似ている試料を抽出した(以下,遠州灘軽石とする).又,2023年7月に狩野川河口にて採集した軽石(以下,狩野川軽石とする),対照試料として2019年に伊豆の浄蓮の滝近辺で採集したカワゴ平軽石(以下,カワゴ平軽石Aとする)と,同所で2019年に作成したカワゴ平の露頭の剥ぎ取り標本に含まれるカワゴ平軽石(以下,カワゴ平軽石Bとする)を用いた.以上の4試料を粉砕し,ふるいに通して粒径ごとに分けた.

3-1 鉱物組成
 粒径が250㎛~500㎛のものを鉱物分析に用いて,鉱物組成では無色鉱物・有色鉱物・火山ガラスを,有色鉱物組成では有色鉱物をそれぞれ200粒以上カウントした.

3-2 火山ガラスの形状
 町田・新井(1992)によると,火山ガラスは主にバブル型と軽石型に分類される[2].そこで,粒径が250㎛~500㎛の試料について双眼実体顕微鏡を用いて軽石に含まれる火山ガラスの形をそれぞれ観察した.

3-3 火山ガラスの屈折率の測定
 粒径が63㎛~125㎛の試料に含まれる火山ガラスの屈折率を屈折率測定装置を用いて測定した.

4 結果と考察
4-1結果(鉱物組成)
 鉱物組成より,全軽石において火山ガラスの割合が高く,特に遠州灘軽石・狩野川軽石・カワゴ平軽石Aが似た傾向を示していた.有色鉱物組成の割合に着目すると採集地によって異なるが,軽石に含まれる鉱物の種類は似た傾向にあり,遠州灘軽石・狩野川軽石ともに斜方輝石,角閃石,磁鉄鉱などの不透明鉱物を主に含んでいた.又,カワゴ平軽石Aとカワゴ平軽石Bにはそれぞれ単斜輝石が少量見られた.更に増島によるカワゴ平軽石の有色鉱物組成[3]と比較すると,遠州灘軽石と似た傾向を示していた.

4-2 火山ガラスの形状 
全試料において火山ガラスの形状は主に軽石型であった.火山ガラスは起源とするマグマによって形状が異なることから,似た種類のマグマを起源とすることが分かる.

4-3 火山ガラスの屈折率の測定
 それぞれの火山ガラス屈折率のピークは遠州灘軽石が1.497~1.498,狩野川軽石が1.497~1.499,カワゴ平軽石Aが1.496~1.497,カワゴ平軽石Bが1.497~1.498であった.

4-4 考察            
 遠州灘軽石は含まれる鉱物の種類がカワゴ平軽石Aやカワゴ平軽石Bと近似していた.又,含まれている火山ガラスの形状も同じ種類であった.更に火山ガラスの屈折率もカワゴ平軽石Aやカワゴ平軽石Bと似た傾向を示し,文献にある値の範囲内であった.
狩野川軽石についても,含まれる鉱物の種類がカワゴ平軽石Aやカワゴ平軽石Bと近似していた.また,含まれている火山ガラスの形状も同じ種類であった.火山ガラスの屈折率もカワゴ平軽石Aやカワゴ平軽石Bと値が近似しており,文献にある値の範囲内であった.
 以上より,遠州灘に漂着した白色の軽石と狩野川河口の軽石は共にカワゴ平火山を起源とする軽石である可能性が高い.

5 反省と課題
 輝石の簡易定量分析や蛍光X線による全岩分析など,より詳しい調査を行い,本研究の結果の正確性を更に高めていきたい.又,他の遠州灘に漂着した白色の軽石についても起源の特定を行いたい.

6 謝辞・参考文献
 研究に協力して下さった,ふじのくに地球環境史ミュージアム客員教授青島晃先生,静岡県立磐田南高等学校地学部の皆さんに改めてお礼申し上げます.
[1]宇都宮櫂・馬淵彩花・𠮷田和佳奈,2022,遠州灘の漂着軽石を探る-福徳岡ノ場軽石との比較-
[2]町田洋・新井房夫,1992,新編火山灰アトラス,東京大学出版,111,129,135
[3]増島淳,2010,土器胎土に含まれる火山ガラス付き角閃石の供給源,静岡地学,101,15-28