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[O08-P20] 流水中の真砂土が流水の侵食力に与える影響について
キーワード:真砂土、侵食力
1 はじめに
竹内他(2023)の発表で、氾濫しやすい河川の特徴の一つに、河岸や河床などが真砂土であることが挙げられていた。一方で、茨城県桜川市の「桜川砂」が真砂土でありJR飯田線の滑り止めに使われていることを知った。私たちは、真砂土と水を混ぜれば土砂を運びやすく、真砂土のみであれば滑り止めになることに興味をもった。そこで、真砂土が流水の侵食力に与える影響を粒径の違いに注目して考察することを目的として研究を始めた。
2 研究方法
2-1 侵食力の定義
スクエア最新図説地学(2022)によると、侵食・運搬が起こるのは、流速が「川底の粒子が動き始める速度」より速いときである。ここから、侵食力の定義を「粒子が動き始めるために必要な力」とした。
2-2 予備実験
以下の3つの予備実験を行った。
2-2-1 予備実験1
<仮説> 侵食力の大きさは水の密度に関係するため、真砂土も海砂も侵食力は同じである。
<実験> 真砂土と海砂を敷いた水路上の重りが移動する時間を計測する。
<結果> 真砂土を敷いた方が、侵食力が大きかった。
2-2-2 予備実験2
<仮説> 予備実験1で実験を重ねるごとに、真砂土の侵食力が減少した。よって、侵食力には、真砂土の微小粒子(以下「泥」)が影響している。
<実験> ビーカーに真砂土と海砂の泥と水を入れ、水流をつくって真砂土が動き出す流速を比較する。
<結果> 真砂土の泥の方が流水の力で動き始めやすい。
2-2-3 予備実験3
2-3 本実験と同様の実験を行った。その結果、データの幅が大きくなったが、ほぼ仮説通りの結果となった。そこで、予備実験3をもとに、実験手順や実験装置、試料を精査して、本実験を行った。
2-3 本実験
<仮説> 文献調査より真砂土の泥には粘性がある。そこで、泥を水と混ぜた混合水を流したとき、重りは侵食力の大きい真砂土の泥を混ぜたときの方が早く動き始める。
<実験手順> ①篩で真砂土と海砂を泥・砂・礫に分ける。真砂土の泥は量を多く取れなかったため使いまわした。②水に真砂土と真砂土の泥と海砂それぞれ30gを混ぜる。③水路に試料と水を混ぜたものを流す。④出口から50㎝の所に置いた重りが流される速さを測る。⑤実験を行うたびに水路に残った水と重りについた水を拭う。
<実験装置> 水路の傾斜7°、水路の長さ1.0m(図1)、重りの質量88.5g
<試料> 水3.0L、泥(真砂土、海砂)30g
3 結果
実験結果は以下の通りである(図2)。
・真砂土の泥を混ぜた水を流したときのデータの平均値が最も速かった。
・1番遅かったのは海砂であった。
・真砂土の泥はエラーバーが大きくなった。
仮説どおり、真砂土の泥が水に混ざったとき、最も重りを押し流す速さが速かった。
4 考察
真砂土の泥の結果のエラーバーが大きくなった原因は、篩で分別したとき、真砂土の泥は量が取れず同じ泥を混ぜた水を複数回使用したからであると考えた。
5 おわりに
真砂土の泥を水に混ぜて流すと海砂のときよりも重りを流す速さが速くなることがわかった。しかし、真砂土の泥を含んだ流水の侵食力がどのように変化するのかまでは明らかにすることができなかった。そこで、今後は次の4点について、さらに研究したい。まず、真砂土の泥のデータの範囲が広かった原因を明らかにしたい。次に、泥だけでなく、砂・礫でも同様の実験を行い粒径の違いも検討したい。また、真砂土と同様に、粘性物質の含まれる鹿沼土などの火山灰でも、同様の実験を行い粘性の影響も明らかにしたい。そして、この実験結果をもとに、水路に重りをおいて、真砂土、海砂、鹿沼土を含んだ流水による侵食力の実験を行いたい。
参考文献
1)竹内俐人、三木俊英、澤畠拓海、林田昂大、三島優弥、畠山悠汰、湯田尚己、小西敦貴、 ”河川が氾濫する地形的条件とダムの関係性”高校生の科学研究発表会@茨城大学(2023)
2)島津ソリューションズ株式会社HP、https://www.shimadzu.co.jp/sss/flow/calc.html、(2023年9月)
3)地形・地質情報ポータルサイト、https://www.web-gis.jp/、(2023年9月)、4)スクエア最新図説地学P141、浜島書店(2022)
竹内他(2023)の発表で、氾濫しやすい河川の特徴の一つに、河岸や河床などが真砂土であることが挙げられていた。一方で、茨城県桜川市の「桜川砂」が真砂土でありJR飯田線の滑り止めに使われていることを知った。私たちは、真砂土と水を混ぜれば土砂を運びやすく、真砂土のみであれば滑り止めになることに興味をもった。そこで、真砂土が流水の侵食力に与える影響を粒径の違いに注目して考察することを目的として研究を始めた。
2 研究方法
2-1 侵食力の定義
スクエア最新図説地学(2022)によると、侵食・運搬が起こるのは、流速が「川底の粒子が動き始める速度」より速いときである。ここから、侵食力の定義を「粒子が動き始めるために必要な力」とした。
2-2 予備実験
以下の3つの予備実験を行った。
2-2-1 予備実験1
<仮説> 侵食力の大きさは水の密度に関係するため、真砂土も海砂も侵食力は同じである。
<実験> 真砂土と海砂を敷いた水路上の重りが移動する時間を計測する。
<結果> 真砂土を敷いた方が、侵食力が大きかった。
2-2-2 予備実験2
<仮説> 予備実験1で実験を重ねるごとに、真砂土の侵食力が減少した。よって、侵食力には、真砂土の微小粒子(以下「泥」)が影響している。
<実験> ビーカーに真砂土と海砂の泥と水を入れ、水流をつくって真砂土が動き出す流速を比較する。
<結果> 真砂土の泥の方が流水の力で動き始めやすい。
2-2-3 予備実験3
2-3 本実験と同様の実験を行った。その結果、データの幅が大きくなったが、ほぼ仮説通りの結果となった。そこで、予備実験3をもとに、実験手順や実験装置、試料を精査して、本実験を行った。
2-3 本実験
<仮説> 文献調査より真砂土の泥には粘性がある。そこで、泥を水と混ぜた混合水を流したとき、重りは侵食力の大きい真砂土の泥を混ぜたときの方が早く動き始める。
<実験手順> ①篩で真砂土と海砂を泥・砂・礫に分ける。真砂土の泥は量を多く取れなかったため使いまわした。②水に真砂土と真砂土の泥と海砂それぞれ30gを混ぜる。③水路に試料と水を混ぜたものを流す。④出口から50㎝の所に置いた重りが流される速さを測る。⑤実験を行うたびに水路に残った水と重りについた水を拭う。
<実験装置> 水路の傾斜7°、水路の長さ1.0m(図1)、重りの質量88.5g
<試料> 水3.0L、泥(真砂土、海砂)30g
3 結果
実験結果は以下の通りである(図2)。
・真砂土の泥を混ぜた水を流したときのデータの平均値が最も速かった。
・1番遅かったのは海砂であった。
・真砂土の泥はエラーバーが大きくなった。
仮説どおり、真砂土の泥が水に混ざったとき、最も重りを押し流す速さが速かった。
4 考察
真砂土の泥の結果のエラーバーが大きくなった原因は、篩で分別したとき、真砂土の泥は量が取れず同じ泥を混ぜた水を複数回使用したからであると考えた。
5 おわりに
真砂土の泥を水に混ぜて流すと海砂のときよりも重りを流す速さが速くなることがわかった。しかし、真砂土の泥を含んだ流水の侵食力がどのように変化するのかまでは明らかにすることができなかった。そこで、今後は次の4点について、さらに研究したい。まず、真砂土の泥のデータの範囲が広かった原因を明らかにしたい。次に、泥だけでなく、砂・礫でも同様の実験を行い粒径の違いも検討したい。また、真砂土と同様に、粘性物質の含まれる鹿沼土などの火山灰でも、同様の実験を行い粘性の影響も明らかにしたい。そして、この実験結果をもとに、水路に重りをおいて、真砂土、海砂、鹿沼土を含んだ流水による侵食力の実験を行いたい。
参考文献
1)竹内俐人、三木俊英、澤畠拓海、林田昂大、三島優弥、畠山悠汰、湯田尚己、小西敦貴、 ”河川が氾濫する地形的条件とダムの関係性”高校生の科学研究発表会@茨城大学(2023)
2)島津ソリューションズ株式会社HP、https://www.shimadzu.co.jp/sss/flow/calc.html、(2023年9月)
3)地形・地質情報ポータルサイト、https://www.web-gis.jp/、(2023年9月)、4)スクエア最新図説地学P141、浜島書店(2022)