日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] ポスター発表

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[O-08] 高校生ポスター発表

2024年5月26日(日) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:原 辰彦(建築研究所国際地震工学センター)、道林 克禎(名古屋大学 大学院環境学研究科 地球惑星科学系 岩石鉱物学研究室)、久利 美和(文部科学省)、紺屋 恵子(海洋研究開発機構)

13:45 〜 15:15

[O08-P52] 札幌旭丘高校でのPM2.5の濃度変動

*佐藤 優奈1坂庭 康仁1 (1.市立札幌旭丘高等学校)

キーワード:PM2.5、濃度変動、飛来ルート

2023年9月に市立札幌旭丘高等学校(以下本校と記載)の屋上にPM2.5の観測装置(Yasunari et al., 2022, https://doi.org/10.1016/j.jenvman.2022.114784)(以下装置と記載)が北海道大学北極域研究センターとの連携活動により設置された。正確な設置場所は、札幌市中央区旭ヶ丘6丁目5-18(北緯43.0378033、東経141.316777、標高:90m)である。この装置は、大気汚染の指標として知られているPM2.5濃度の観測に特化したものであった。

 私たちのグループでは、観測されたPM2.5の「濃度変動」と、本校に飛来してくるPM2.5の「飛来ルート」を調べることを目的に研究を始めた。本校の観測装置で観測したデータは、名古屋大学宇宙地球環境研究所・松見豊名誉教授が作成したマクロを使用して統計処理(平均値の計算など)を行ってから解析した。観測データ以外で利用したデータは、NASA(アメリカ航空宇宙局)が作成した再解析データMERRA-2(Chem Mapsを使用:https://fluid.nccs.nasa.gov/reanalysis/)、NOAA(アメリカ海洋大気庁)のHYSPLITの後方粒跡線解析(オンライン計算:https://www.ready.noaa.gov/HYSPLIT.php)、日本気象協会(https://tenki.jp/)が提供する天気図、気象庁(https://www.jma.go.jp/)のオープンデータである。これらのデータからPM2.5の「濃度変動」と「飛来ルート」の分析と考察を行った。

 飛来ルートについては、NASAのChem Mapsを用いて3時間ごとのデータを画像保存し、連続化することで動画を作り、PM2.5の移動する様子を可視化した。その結果、2023年9月から11月において、中国やロシアで発生したPM2.5 が日本に飛来していることが確認できた。2023年9月から11月の濃度変動については、天気図と組み合せて分析した結果、台風の移動と共にPM2.5も移動していることが分かった。MERRA-2のsea salt(海塩)が台風の動きと共に移動していることから、このPM2.5は海洋エアロゾルが主成分であることが示唆された。また、NOAAのHYSPLITは空気塊がどこからやってきたかを議論できる解析ツールであるが、本研究ではPM2.5の濃度増加イベントから3日前までの飛来ルートを議論するため後方粒跡線解析を行った。このHYSPLITと天気図を使用してPM2.5の濃度変動の要因を分析したところ、高気圧から低気圧に向かって空気塊が移動してきたことが確認できた。空気は気圧の高いところから低いところに流れるため、PM2.5はこの空気の流れに乗って移動しているということが考えられた。

 その他の分析では、気象庁のオープンデータの「平均気温、最高気温、最低気温、降水量の合計、日照時間、合計全天日射量、最新積雪、降雪量合計、平均風速、最大風速、最大瞬間風速、平均蒸気圧、平均湿度」と私たちが観測したPM2.5の濃度データの「最大値、平均値、最小値」との相関係数を調べたが、いずれの気象データとも強い相関は見られなかった。

 今回は自分達で観測したデータを、様々なオープンデータと組み合わせて分析でき、本校におけるPM2.5観測に関する研究を初めて行うことができた。現在、2023年12月以降のデータについても解析中であり、詳細は当日発表する予定である。