15:30 〜 15:50
[O09-05] 地殻変動観測から見た能登半島における2020-2024年の地震活動
★招待講演
キーワード:地震活動、能登半島、地殻変動、GNSS
2024年1月1日16時10分に発生した能登半島地震は、マグニチュード(M)が7.6と日本海側や内陸部で発生する震源の浅い地震としては最大級の地震だった。能登半島北東部ではこの地震の3年ほど前から活発な群発地震活動が起こっており、 2023年5月5日のM6.5(最大震度6強)などの大きな地震が相次いで発生していた中で、一連の地震活動の中で最大の地震が2024年元日に発生した。本発表では、GNSSによる地殻変動観測結果を中心に一連の地震活動とそのメカニズムに関する仮説を紹介する。
この地震は、能登半島の北方沖にある北東―南西方向に延びる活断層が動いたことが有力視されている。この活断層は地下では南東方向に傾斜しており、今回の地震では能登半島の地塊が日本海側の地塊に乗り上げるような逆断層運動をしたと考えられている。地震に伴う地殻変動は、GNSS(米国のGPSなど人工衛星を用いた測位システムの総称)により、能登半島北部を中心に水平方向で西向きに最大2m程度、上下方向は能登半島の北岸で最大2m程度隆起したことが観測された。さらに、合成開口レーダー画像の解析からは、輪島市西部の沿岸域で最大4m程度に達する隆起が観測されている。能登半島北岸の隆起は、現在の標高や海成段丘の分布と調和的であり、過去にも繰り返し同じような地震が発生してきたと考えられる。
2024年元日の大地震に先行して、2020年12月頃から能登半島北東部では地震活動が活発化していた。地震活動の活発化とほぼ同時期に、能登半島北東部のGNSS観測点では、隆起などのそれまでと傾向の異なる「非定常」地殻変動が観測された。そのため、京大防災研では金沢大学と協力して、2021年9月に地震の震源域近傍に臨時のGNSS観測点を設置した。さらに、ソフトバンク株式会社による独自基準点(GNSS観測点)のデータ提供を受け、能登半島における非定常地殻変動を明らかにすることができた。2020年12月から2023年4月までに、群発地震の震源域から放射状にひろがる最大約3 cmの水平変動と震源域周辺で最大約6cmの隆起を示す非定常地殻変動が観測された。
筆者が推測する一連の地震活動のメカニズムに関する仮説は、つぎのとおりである。能登半島北東部には、下部地殻にもともとマントル起源の深部流体に富む領域があった。ここから流体が2020年12月に地震活動を伴いながら,深さ16km程度まで上昇した。上昇してきた流体の体積は3,000万m3にのぼると考えられる。この流体が南東傾斜の断層帯を通って移動・拡散し、深さ15km以深では主にスロースリップを引き起こし、深さ15km以浅では激しい群発地震を誘発した。さらに、この近傍には、過去千年以上にわたり応力を蓄積してきた海底活断層があり、流体上昇がその破壊の最後の引き金となって、 M7.6の大地震が発生したと考えられる。
謝辞:本研究で使用したソフトバンクの独自基準点の後処理解析用データは、「ソフトバンク独自基準点 データの宇宙地球科学用途利活用コンソーシアム」の枠組みを通じてソフトバンク株式会社とALES株式会社よ り提供を受けたものを使用しました。また、国土地理院から公開された後処理解析用データを使用しました。
この地震は、能登半島の北方沖にある北東―南西方向に延びる活断層が動いたことが有力視されている。この活断層は地下では南東方向に傾斜しており、今回の地震では能登半島の地塊が日本海側の地塊に乗り上げるような逆断層運動をしたと考えられている。地震に伴う地殻変動は、GNSS(米国のGPSなど人工衛星を用いた測位システムの総称)により、能登半島北部を中心に水平方向で西向きに最大2m程度、上下方向は能登半島の北岸で最大2m程度隆起したことが観測された。さらに、合成開口レーダー画像の解析からは、輪島市西部の沿岸域で最大4m程度に達する隆起が観測されている。能登半島北岸の隆起は、現在の標高や海成段丘の分布と調和的であり、過去にも繰り返し同じような地震が発生してきたと考えられる。
2024年元日の大地震に先行して、2020年12月頃から能登半島北東部では地震活動が活発化していた。地震活動の活発化とほぼ同時期に、能登半島北東部のGNSS観測点では、隆起などのそれまでと傾向の異なる「非定常」地殻変動が観測された。そのため、京大防災研では金沢大学と協力して、2021年9月に地震の震源域近傍に臨時のGNSS観測点を設置した。さらに、ソフトバンク株式会社による独自基準点(GNSS観測点)のデータ提供を受け、能登半島における非定常地殻変動を明らかにすることができた。2020年12月から2023年4月までに、群発地震の震源域から放射状にひろがる最大約3 cmの水平変動と震源域周辺で最大約6cmの隆起を示す非定常地殻変動が観測された。
筆者が推測する一連の地震活動のメカニズムに関する仮説は、つぎのとおりである。能登半島北東部には、下部地殻にもともとマントル起源の深部流体に富む領域があった。ここから流体が2020年12月に地震活動を伴いながら,深さ16km程度まで上昇した。上昇してきた流体の体積は3,000万m3にのぼると考えられる。この流体が南東傾斜の断層帯を通って移動・拡散し、深さ15km以深では主にスロースリップを引き起こし、深さ15km以浅では激しい群発地震を誘発した。さらに、この近傍には、過去千年以上にわたり応力を蓄積してきた海底活断層があり、流体上昇がその破壊の最後の引き金となって、 M7.6の大地震が発生したと考えられる。
謝辞:本研究で使用したソフトバンクの独自基準点の後処理解析用データは、「ソフトバンク独自基準点 データの宇宙地球科学用途利活用コンソーシアム」の枠組みを通じてソフトバンク株式会社とALES株式会社よ り提供を受けたものを使用しました。また、国土地理院から公開された後処理解析用データを使用しました。