日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS03] 太陽系小天体:太陽系の形成と進化における最新成果と今後の展望

2024年5月28日(火) 10:45 〜 12:00 101 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:深井 稜汰(宇宙航空研究開発機構)、岡田 達明(宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所)、荒川 創太(海洋研究開発機構)、吉田 二美(産業医科大学)、座長:岡田 達明(宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所)

11:30 〜 11:45

[PPS03-09] 紫外線照射による小天体の宇宙風化シミュレーション
- 可視反射率の急激な変化

*佐々木 晶1、盛満 眞一1、海田 博司2、廣井 孝弘3長谷川 直4、和田 武彦5 (1.大阪大学大学院理学研究科宇宙地球科学専攻、2.国立極地研究所、3.ブラウン大学、4.宇宙科学研究所、5.国立天文台)

キーワード:宇宙風化作用、紫外線照射、反射率低下、S型小惑星

宇宙風化とは、空気のない岩石質天体の表面物質の光学的性質を変化させるプロセスである。代表的な変化は、赤化(傾きの増加)、暗化(全体的な暗色化)、反射スペクトルの吸収帯の減衰の3つである。これらの変化は、表面鉱物粒のアモルファスの縁にナノ相の鉄粒子が形成されることによって起こると考えられている。その原因としては、微小隕石の衝突、太陽風や宇宙線の照射、太陽からの紫外線などが挙げられる。
これまで、高速ダスト衝突を模擬したパルスレーザー照射実験や、太陽風照射を模擬したイオン照射実験が行われてきたが、紫外線照射については、予備的な実験が行われたのみであった。我々は、カンラン石と輝石(エンスタタイト)ペレット試料に紫外線を照射し、宇宙風化のシミュレーション実験を行った。カンラン石とエンスタタイトの可視光反射率はそれぞれ40%と20%減少した。この反射率の減少は、より長い赤外波長のスペクトルを変化させることなく、飽和する可能性がある。おそらく紫外線照射は鉱物の格子欠陥の増加やアモルファス化を引き起こしている。近赤外の反射率に影響が少ないことから、ナノ鉄微粒子は形成されていないかも知れない。パルスレーザー照射は紫外線照射による変化をオーバープリントされる。可視域と近赤外域でより暗くなる。この結果は、小惑星の宇宙風化において、最初の1-10年間は太陽紫外線が主な原因であり、その後100万年までは太陽風照射、その後は微小隕石衝突による宇宙風化が表面で起こること示唆している。

図 UV照射(0.095hrは地球軌道で約1日に相当する紫外線量)前後のカンラン石とエンスタタイトのペレット試料の写真。照射回数は右に向かって増加している。