17:15 〜 18:45
[SCG54-P06] トンガ海底通信ケーブルを用いたDAS観測による火山性地震の検出

キーワード:分散型音響センシング、火山性地震、フンガトンガ・フンガハアパイ火山、火山観測
(背景と目的)2022年1月に起きたフンガトンガ・フンガハアパイ火山(HTHH)の大規模噴火は,津波や降灰による大きな被害を出した。防災上,海域火山の監視を強化することが求められている。海域火山は,陸の火山に比べて観測点が少なく,噴火現象の理解や状況の監視が遅れている。海域火山の活動を観測する手段として,海底地震計が挙げられる。しかし、海底地震計は非常にコストがかかり,特にリアルタイムでデータが得られるケーブル式海底地震計が整備されている地域は少ない。そこで,既存の海底光ファイバーケーブルを用いた分散型音響センシング(DAS)による観測が注目されている。この技術では,地震波の伝播を地震計よりはるかに高密度にとらえることができるうえ,安価に観測を実施することができる。本研究では,DASによる海域火山の監視を実現するため,2023年2月6日から13日にトンガで行われたDAS観測のデータ[1]から火山性の地震を検出することを目指した。
(方法)
本研究で解析するDAS観測は, HTHH噴火による損傷の修復のため,ヌクアロファにある陸上局から31km(HTHHから南南東約40km)の海底で切断されていたトンガ国内通信ケーブルを利用して実施された。Nakano et al. [1] では,全観測期間(約1週間)のデータから1-20 Hzに注目して約160個の地震が抽出された。また,P波とS波が明瞭にみられ,震源がトンガ近傍と思われる17個の地震について震源が決定され,このうちの1つはHTHH直下で発生したものであった。
本研究では,火山性微動に特徴的な低周波帯(2-4 Hz)に注目し,ノイズレベルの低い区間においてパワーの中央値をとることでイベントを検出した。Nakano et al. [1] により震源が決められている地震波の見かけ速度を参照することで,見かけ速度,および,震源とケーブルのなす角の関係を推定し,検出された小規模なイベントについて震源の方向を推定した。また,低周波帯と高周波帯での振幅比を計算し,シグナルの特徴を調査した。
(結果と考察)
新たに1日当たり100個程度のNakano et al. [1] では検出されなかった小規模なイベントが検出された。そして,それらの多くが,HTHH直下に震源が決められているM2.8の地震[1]のS波と同程度の見かけ速度(2.5-3 km/s)を持っており,トンガの火山列の方向から来た地震であると考えられる。また,多くの地震において,低周波帯(2-4 Hz)と高周波帯(5-20 Hz)の最大振幅がほぼ同じになるという特徴があった。これらの小規模な地震は共通のメカニズムで起こっており,高周波に卓越したM2.8の地震とは異なっていると考えられる。これらのことから,HTHHまたはその周辺の火山活動に伴う地震または微動が多数捉えられた可能性が高い。
(参考文献)
[1] Nakano, M., Ichihara, M., Suetsugu, D. et al., Monitoring volcanic activity with distributed acoustic sensing using the Tongan seafloor telecommunications cable, 2024, Earth, Planets and Space, doi:10.1186/s40623-024-01972-2.
謝辞:
本研究で用いたデータは,トンガケーブル社,JICA,大湊隆雄氏・八木健夫氏(東大・地震研),小野重明氏(JAMSTEC),および,末次大輔氏・V. Tovi氏をはじめとするトンガ地質サービスのスタッフの協力によって得られたものです。本研究は,JICA-JSTによるSATREPS(ID 23727132)の支援を受けて実施しました。
(方法)
本研究で解析するDAS観測は, HTHH噴火による損傷の修復のため,ヌクアロファにある陸上局から31km(HTHHから南南東約40km)の海底で切断されていたトンガ国内通信ケーブルを利用して実施された。Nakano et al. [1] では,全観測期間(約1週間)のデータから1-20 Hzに注目して約160個の地震が抽出された。また,P波とS波が明瞭にみられ,震源がトンガ近傍と思われる17個の地震について震源が決定され,このうちの1つはHTHH直下で発生したものであった。
本研究では,火山性微動に特徴的な低周波帯(2-4 Hz)に注目し,ノイズレベルの低い区間においてパワーの中央値をとることでイベントを検出した。Nakano et al. [1] により震源が決められている地震波の見かけ速度を参照することで,見かけ速度,および,震源とケーブルのなす角の関係を推定し,検出された小規模なイベントについて震源の方向を推定した。また,低周波帯と高周波帯での振幅比を計算し,シグナルの特徴を調査した。
(結果と考察)
新たに1日当たり100個程度のNakano et al. [1] では検出されなかった小規模なイベントが検出された。そして,それらの多くが,HTHH直下に震源が決められているM2.8の地震[1]のS波と同程度の見かけ速度(2.5-3 km/s)を持っており,トンガの火山列の方向から来た地震であると考えられる。また,多くの地震において,低周波帯(2-4 Hz)と高周波帯(5-20 Hz)の最大振幅がほぼ同じになるという特徴があった。これらの小規模な地震は共通のメカニズムで起こっており,高周波に卓越したM2.8の地震とは異なっていると考えられる。これらのことから,HTHHまたはその周辺の火山活動に伴う地震または微動が多数捉えられた可能性が高い。
(参考文献)
[1] Nakano, M., Ichihara, M., Suetsugu, D. et al., Monitoring volcanic activity with distributed acoustic sensing using the Tongan seafloor telecommunications cable, 2024, Earth, Planets and Space, doi:10.1186/s40623-024-01972-2.
謝辞:
本研究で用いたデータは,トンガケーブル社,JICA,大湊隆雄氏・八木健夫氏(東大・地震研),小野重明氏(JAMSTEC),および,末次大輔氏・V. Tovi氏をはじめとするトンガ地質サービスのスタッフの協力によって得られたものです。本研究は,JICA-JSTによるSATREPS(ID 23727132)の支援を受けて実施しました。