公益社団法人日本補綴歯科学会第133回学術大会 / The 14th Biennial Congress of the Asian Academy of Prosthodontics (AAP)

講演情報

ポスター発表

現地発表

症例

2024年7月7日(日) 12:00 〜 13:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際会議場 2F コンベンションホール B)

[P-144] 下顎腫瘍再手術後の金属床顎義歯修理にデジタル技術を応用した症例

*山谷 雄一1、笠原 拓海1、中村 穂乃香1、李 施恩1、服部 麻里子2、若林 則幸2、金澤 学1,3 (1. 東京医科歯科大学病院 歯科技工部、2. 東京医科歯科大学 生体補綴歯科学分野、3. 東京医科歯科大学 口腔デジタルプロセス学分野)

[Abstract]
【諸言】
 腫瘍よる顎欠損患者の有床義歯は腫瘍再発による口腔内の変化に合わせて修理が必要となることがある.修理のため複雑な形態の顎義歯を取り込み印象することは困難で,材料の誤飲・誤嚥・迷入のリスクがある一方で,昨今,デジタル技術を応用した顎顔面補綴が普及し始めている1.本報告では金属床顎義歯修理にデジタル技術を応用した症例を示す.
【症例の概要・治療内容】 
 患者は70歳男性で下顎扁平上皮癌術後,2021年にデジタル技術を応用し製作した上下顎コバルトクロム床部分床義歯を使用していた.2023年に腫瘍の再発を認め,再手術となり下顎右下前歯部が欠損となった.旧義歯に粘膜調整材を使用して調整の後,調整した形態をレジン床に置き換えるため,下顎義歯を預かっての修理となった.口腔内スキャナーで口腔内を印象採得し,模型スキャナーで義歯をスキャンした.得られた3DデータをCADソフトウェア上で重ね合わせ,残存歯と義歯粘膜面のデータを結合させた.粘膜調整材部分をレジンに置換するためレジン床部分に前処置をし,再びスキャンして重ね合わせを行った.CADソフトウェア上で人工歯排列を行い,模型と増床パーツを設計した.模型を3Dプリンタで出力し,増床パーツは床用レジンを切削加工した.3Dプリント模型上で義歯,増床パーツ,人工歯を結合し完成とした.
【経過ならびに考察】
 装着した義歯の適合は良好で,問題なく使用することができた.スキャンした3Dデータを用いて歯科医師が調整した最終形態を反映できたことで良好な結果を得ることができたと考えられる.デジタル技術を義歯修理に応用することは取り込み印象を省略できる点で有利である.アンダーカットの多い顎義歯の取り込み印象から石膏模型を製作することは困難だが,今回はその必要がなくなり,増床パーツを床用レジンから削り出すことで,3Dプリント模型上で義歯修理を行うことができた.
【参考文献】
1)Zhang M, Hattori M, Elbashti ME et al. Feasibility of Intraoral Scanning for Data Acquisition of Maxillectomy Defects. Int J Prosthodont 2020;33(4):452-456.