[O-0696] 短時間作用性吸入β2刺激薬のアシストユースと呼吸リハビリテーションが重症COPD患者にもたらす効果
Keywords:COPD, 呼吸リハビリテーション, 身体活動量
【はじめに,目的】
慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者は,長時間作用性気管支拡張薬(LAMA,LABA)を十分使用していても,労作時の息切れ・呼吸困難が残存している場合が少なくない。そのようなCOPD患者は,日常生活における活動量が低下する傾向が強く,これに伴う運動耐容能や健康関連QOL(HRQOL)の低下が懸念される。これに対し,労作時呼吸困難軽減を目的に,動作前に短時間作用性β2刺激薬(SABA)を吸入するアシストユースの実践が推奨されているが,その効果に関する報告は少ない。さらに,薬物療法に加え呼吸リハビリテーション(呼吸リハ)の併用が推奨されているが,これに関する報告は皆無である。
そこで今回,重症COPD患者に対し,SABAのアシストユースを積極的に実施すると共に,呼吸リハを併用することによる効果につき調査検討を行った。
【方法】
LAMA,LABAを使用しているにもかかわらず,日常生活において呼吸困難を感じており,%FEV1が50%未満,COPD Assessment Test(CAT)スコアが10以上の重症COPD患者の中から,SABAのアシストユースの経験がない男性10名を対象とした。その内訳は,平均年齢:71.2±4.7歳,MRC:II/7名,III/3名,CAT:20±6.4,肺機能:%VC:87.1±21.9,%FEV1:29.9±12.5,病期分類:III/5名,IV/5名,服薬状況:スピリーバ全例,アドエア4名,ホクナリン6名。
4週間の吸入前調査の後,12週間の吸入単独効果の調査を行った。この際,在宅運動指導や生活習慣改善指導は一切実施しなかった。その後さらに8週間,呼吸リハを在宅トレーニング中心にて行い,追加効果に関して調査した。検討項目は,1.肺機能:FEV1,IC,2.息切れ:息切れ問診票,BDI・TDI,3.運動耐容能:6分間歩行距離,4.HRQOL:CAT,5.身体活動量:スズケン社製ライフコーダーとした。評価は各月の診察日にあわせて行った。身体活動量は4週間連続で測定し,測定開始後及び回収日前1週間を除く連続2週間の平均歩数を算出し用いた。6分間歩行距離の経時的変化は,SABAを使用しない状況で測定した。検討内容は,1.SABAの単独効果,2.呼吸リハの追加効果とした。また,アシストユースの実施の感想についても調査した。
アシユトユースのタイミングは,吸入前調査における身体活動量測定により得られた生活活動パターンを解析し,患者と相談の上最適と思われるタイミングでの使用を指導した。また実施状況は,患者からの聞き取り調査と,ライフコーダーのイベント記録機能を利用して確認し,その都度患者と話し合いを行って修正した。
【結果】
SABAの単回投与により,FEV1,IC,6分間歩行距離は有意な向上を示した。各検討項目の経時的変化は,息切れ問診票は(吸入前/吸入後1M/2M/3M/呼吸リハ後1M/2M)34.2→24.4→23→22.3→21→19.2,BDI・TDIは(吸入後1M/2M/3M/呼吸リハ後1M/2M)1.6→2→1.9→2.4→2.9,6分間歩行距離は(吸入前/吸入後3M/呼吸リハ後2M)362m→420m→451m,CATは(吸入前/吸入後1M/2M/3M/呼吸リハ後1M/2M)20→14.4→13.7→12.7→11.7→10.4,身体活動量(step)は(吸入前/吸入後1M/2M/3M/呼吸リハ後1M/2M)3174→4252→4631→4565→5207→5758であり,吸入前と比較し吸入後すべての時期及び呼吸リハ後の間に有意な向上を認めた。ただし,吸入後1,2,3においてはそれぞれの間に有意差を認めなかった。また,吸入後1・2・3Mと比較し,呼吸リハ2Mにおいて有意な向上を認めた。
SABA使用による副作用は1例も認めなかった。またアシストユース実施の感想も,生活活動パターンを解析した指導は,実施のタイミングのイメージや息切れ改善の体感効果が得られ易い,症状を自己コントロールしている実感が強いなどの回答が多く,否定的な意見はなかった。
【考察】
LAMA,LABAを使用していても十分な効果があることから,多くのCOPD患者を対象にできる可能性があると考えられる。ただし,呼吸リハの追加効果が明らかになったことから,患者の能力を最大限に引き出すには,呼吸リハの併用実施が不可欠であることが示唆された。アシストユース成功の鍵は,患者のセルフマネージメントの意識付けが不可欠であるが,生活リズムを解析し,最適なタイミングで使用できるように指導したことが,今回の結果に大きく影響したと考えられる。
今回,対象が男性のみであること,症例数が少ないことなどから結果の解釈には限界がある。今後症例数を増やしさらに検討を続けると共に,使用に関する安全性についても引き続き調査していく予定である。
【理学療法学研究としての意義】
この調査は,薬物療法を主体とするCOPD治療において,呼吸理学療法は患者の最大限の能力を引き出すために必須であることを証明する。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者は,長時間作用性気管支拡張薬(LAMA,LABA)を十分使用していても,労作時の息切れ・呼吸困難が残存している場合が少なくない。そのようなCOPD患者は,日常生活における活動量が低下する傾向が強く,これに伴う運動耐容能や健康関連QOL(HRQOL)の低下が懸念される。これに対し,労作時呼吸困難軽減を目的に,動作前に短時間作用性β2刺激薬(SABA)を吸入するアシストユースの実践が推奨されているが,その効果に関する報告は少ない。さらに,薬物療法に加え呼吸リハビリテーション(呼吸リハ)の併用が推奨されているが,これに関する報告は皆無である。
そこで今回,重症COPD患者に対し,SABAのアシストユースを積極的に実施すると共に,呼吸リハを併用することによる効果につき調査検討を行った。
【方法】
LAMA,LABAを使用しているにもかかわらず,日常生活において呼吸困難を感じており,%FEV1が50%未満,COPD Assessment Test(CAT)スコアが10以上の重症COPD患者の中から,SABAのアシストユースの経験がない男性10名を対象とした。その内訳は,平均年齢:71.2±4.7歳,MRC:II/7名,III/3名,CAT:20±6.4,肺機能:%VC:87.1±21.9,%FEV1:29.9±12.5,病期分類:III/5名,IV/5名,服薬状況:スピリーバ全例,アドエア4名,ホクナリン6名。
4週間の吸入前調査の後,12週間の吸入単独効果の調査を行った。この際,在宅運動指導や生活習慣改善指導は一切実施しなかった。その後さらに8週間,呼吸リハを在宅トレーニング中心にて行い,追加効果に関して調査した。検討項目は,1.肺機能:FEV1,IC,2.息切れ:息切れ問診票,BDI・TDI,3.運動耐容能:6分間歩行距離,4.HRQOL:CAT,5.身体活動量:スズケン社製ライフコーダーとした。評価は各月の診察日にあわせて行った。身体活動量は4週間連続で測定し,測定開始後及び回収日前1週間を除く連続2週間の平均歩数を算出し用いた。6分間歩行距離の経時的変化は,SABAを使用しない状況で測定した。検討内容は,1.SABAの単独効果,2.呼吸リハの追加効果とした。また,アシストユースの実施の感想についても調査した。
アシユトユースのタイミングは,吸入前調査における身体活動量測定により得られた生活活動パターンを解析し,患者と相談の上最適と思われるタイミングでの使用を指導した。また実施状況は,患者からの聞き取り調査と,ライフコーダーのイベント記録機能を利用して確認し,その都度患者と話し合いを行って修正した。
【結果】
SABAの単回投与により,FEV1,IC,6分間歩行距離は有意な向上を示した。各検討項目の経時的変化は,息切れ問診票は(吸入前/吸入後1M/2M/3M/呼吸リハ後1M/2M)34.2→24.4→23→22.3→21→19.2,BDI・TDIは(吸入後1M/2M/3M/呼吸リハ後1M/2M)1.6→2→1.9→2.4→2.9,6分間歩行距離は(吸入前/吸入後3M/呼吸リハ後2M)362m→420m→451m,CATは(吸入前/吸入後1M/2M/3M/呼吸リハ後1M/2M)20→14.4→13.7→12.7→11.7→10.4,身体活動量(step)は(吸入前/吸入後1M/2M/3M/呼吸リハ後1M/2M)3174→4252→4631→4565→5207→5758であり,吸入前と比較し吸入後すべての時期及び呼吸リハ後の間に有意な向上を認めた。ただし,吸入後1,2,3においてはそれぞれの間に有意差を認めなかった。また,吸入後1・2・3Mと比較し,呼吸リハ2Mにおいて有意な向上を認めた。
SABA使用による副作用は1例も認めなかった。またアシストユース実施の感想も,生活活動パターンを解析した指導は,実施のタイミングのイメージや息切れ改善の体感効果が得られ易い,症状を自己コントロールしている実感が強いなどの回答が多く,否定的な意見はなかった。
【考察】
LAMA,LABAを使用していても十分な効果があることから,多くのCOPD患者を対象にできる可能性があると考えられる。ただし,呼吸リハの追加効果が明らかになったことから,患者の能力を最大限に引き出すには,呼吸リハの併用実施が不可欠であることが示唆された。アシストユース成功の鍵は,患者のセルフマネージメントの意識付けが不可欠であるが,生活リズムを解析し,最適なタイミングで使用できるように指導したことが,今回の結果に大きく影響したと考えられる。
今回,対象が男性のみであること,症例数が少ないことなどから結果の解釈には限界がある。今後症例数を増やしさらに検討を続けると共に,使用に関する安全性についても引き続き調査していく予定である。
【理学療法学研究としての意義】
この調査は,薬物療法を主体とするCOPD治療において,呼吸理学療法は患者の最大限の能力を引き出すために必須であることを証明する。