第95回日本細菌学会総会

講演情報

総会長企画シンポジウム

[PS1] 総会長企画シンポジウム1
細菌学研究者メモリアルシンポジウム

2022年3月29日(火) 14:30 〜 16:30 チャンネル4

コンビーナー:菊池 賢(東京女子医科大学)

[PS1-2] 平松啓一先生を偲んで

菊池 賢 (東京女子医大・感染症科)

平松啓一先生は,1975年東京大学医学部を卒業後,免疫学,遺伝子工学,ウイルス学を経て,1980年代から細菌学に専門を移し,亡くなるまで,研究を続けられた.私は2006年から2014年までの8年間の短い間,一緒に仕事をさせていただいただけので,追悼の辞を述べるには他に相応しい方々が大勢おられる.しかし,細菌学会では特に学問の発展に貢献された物故者への追悼講演がないことに気がつき,総会長として企画した次第である.先生の業績はMRSAの耐性機構の解明などは衆知のことなので,エピソードを紹介したい.先生は,教室では「宇宙人」と呼ばれ,その自由な着想と慧眼は誰も理解出来ず,ミーティングでは教室員をやり込めることが日常だった.逆に自分予想していない答えを提示されることを何よりも喜んだ.学会長を務めることなど,全く念頭になく,人付き合いもあまり得手ではなかったので,人間的に誤解されることも少なくなかった.先生は私に取っては恩師というより,上司・同僚という立場であり,互いの研究には全く干渉しない,というスタンスで接して頂いてとても感謝している.平松先生の残した強烈なメッセージは「Curiosityの多様性」に尽きると思う.先生の足跡は今後も細菌学会を背負って立つ研究者に,大きな示唆と課題を与えてくれ続けるだろう.