[P22-2] 開頭術後患者のICUにおける高乳酸血症に影響する因子の検討
【背景】敗血症において、血中乳酸値は予後と相関する因子である。しかし、周術期の乳酸値上昇が、予後に関連するかどうかは不明である。開頭手術後の乳酸値上昇とそれに関連する因子についての報告は少ない。【目的】開頭術後患者での高乳酸血症の頻度と乳酸値に影響を与える因子について調査を行うこと。【方法】2013年1月1日から2018年8月20日に当院で開頭術を施行された患者を対象とし、後方視的に調査した。非ICU入室、緊急手術、15歳以下、血中乳酸値測定を施行していない患者などは除外した。血中乳酸値測定をABL800FLEX(正常上限≦12mg/dl)で行い、12mg/dlを超える場合を高乳酸血症とした。症例毎のICU入室後24時間の最高乳酸値を調査し、乳酸値の変化に及ぼす因子として年齢、性別、BMI、APACHE2Score、術前浸透圧利尿剤(濃グリセリン・果糖注射液)投与の有無、術中浸透圧利尿剤(D-マンニトール注射液)投与の有無、術中水分バランス、手術時間などについてJMPpro12を使用して多変量解析を行った。【結果】同期間で対象となった患者438例のうち、337例が解析対象となった。全症例術後28日間生存していた。高乳酸値を示したものは80%(270/337)、それらの患者の乳酸値は21(14-28)[中央値(25-75パーセンタイル)]mg/dl、年齢 62(47-70)歳、BMI 23(20.7-25.8)、APACHE2Score10(8-13)、術中水分バランス1437(954.5-1917.5)ml、手術時間378(278.5-483.5)分であった。浸透圧利尿剤の使用は術前濃グリセリン・果糖注射液27%、術中D-マンニトール注射液79%であった。高乳酸値と、年齢(P=0.0156)、および術前浸透圧利尿剤投与(P=0.0077、オッズ比=3.7557(95%CI 8.637))との間に有意の関連があった。その他の因子に有意の関連はなかった。【結論】開頭脳外科手術後患者の80%が高乳酸血症を示した。乳酸値上昇に影響を与える因子は年齢、術前の浸透圧利尿剤(濃グリセリン・果糖注射液)投与であった。