第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

パネルディスカッション

[PD2] パネルディスカッション2
各領域研修において集中治療は織り込まれているか?

2019年3月1日(金) 09:40 〜 11:40 第3会場 (国立京都国際会館1F アネックスホール1)

座長:福井 道彦(音羽病院集中治療部), 松田 兼一(山梨大学医学部救急集中治療医学講座)

[PD2-3] 小児科専攻医に対する集中治療研修の方略

佐藤 紘一, 後藤 保, 濱上 知宏, 藤崎 修, 松井 大作, 大江 崇史, 番匠谷 友紀, 上田 泰弘, 星野 あつみ, 小林 誠人 (公立豊岡病院但馬救命救急センター)

【背景】 
 小児科専門医研修プログラムに「集中治療」の項目はないが、経験すべき症候・疾患には「ショック・溺水・熱傷・急性心不全・急性腹症・来院時心停止・中毒・虐待」など集中治療が必要となる症候・疾患が多数含まれる。しかし、PICUのない施設で安全に研修できるかは疑問が残る。
【目的】
 小児科専攻医への集中治療研修の方略を提案する。
【方法】
 当院に救急搬送され緊急入院となった小児内因性疾患患者を対象に、2016年3月以前の4年間(前体制)と2016年4月から2年間(現体制)で重症度、予後、入院診療担当科などの小児診療体制、小児科専攻医と救急集中治療医の関わりを後方視的に比較検討した。尚、現体制から救命救急センター(救急集中治療科)に小児科専門医を専従させた。また、気管挿管と中心静脈ルート確保の手技数に関しては外因性疾患を含んだ。結果は前体制:現体制、中央値で示す。
【結果】 
 緊急入院は191人:138人、PIM2による予測死亡率は0.2%:0.17%(P<0.01)、実死亡率は0.01%:0%(P=0.51)であった。緊急入院の内救急集中治療科が担当し、当救命救急センター集中治療室に入室したのは16人(8.4%):15人(10.9%)、PIM2による予測死亡率は0.68%:0.21%(P=0.07)、両体制とも死亡例はなかった。気管挿管症例数は4.25例/年:7.5例/年、中心静脈ルート確保症例数は1.25例/年:2例/年であった。また現体制から小児科専門医である救急集中治療医が、小児科専攻医に指導しながら内外因性患者を問わず気管挿管と中心静脈ルート確保の手技を実践させ、毎週の小児科カンファレンスにも参加している。
【考察】 
 現体制で救急集中治療科入院の割合が増加し死亡例が無いことは、院内体制の整備とともに診療の質の向上が寄与していると考察され、その環境下での小児科専攻医への手技や集中治療教育は安全に行われていると考察された。
【結語】 
 救急集中治療医が管理する体制のもとに小児重症患者を集約し、そこに小児科専攻医を診療に参加させることで小児集中治療研修体制を構築することが可能である。