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[47] カメラ映像の移動体検出によりICU患者の危険行動検出をおこなうシステムの研究開発
世界的な新型コロナウイルス感染症の流行により,病院内における遠隔医療(遠隔患者モニタリング;RPM)のニーズが著しく高まっている.特に,コロナ患者を管理するような重症系病床では,病床当たり一台の患者モニタリングカメラが導入されるなどRPM環境の整備が急速に進んだ.一方で,当院での調査によれば,初期のコロナ禍における隔離病棟では,通常に比べチューブやカテーテルの自己抜去といったインシデント数が3倍に増加した.主な要因として,観察不足や確認不足が報告されており,医療従事者が能動的にかつ定期的にカメラ映像を見て判断しなくてはならないために,医療安全の向上効果が限定的になってしまったと考えられる.そこで当院の研究グループでは,横浜市立大学発ベンチャー・㈱CROSS SYNCと共同で,患者モニタリングカメラより抽出した画像情報に対してコンピュータビジョンを用いて,危険行動を検出するシステムを研究開発している.具体的には,深層学習ベースの物体検出モデルを用いて,映像中の人物や病床の識別をおこない,関心領域である患者とそうでない医療従事者との区別をおこなった上で,複数の移動体検出技術を用いて患者の動きの大きさ,また,動きの位置を特定する仕組みである.本演題では,移動体検出による患者体動認識から得られた所見をもとに,患者の危険行動に通ずる動きの特徴,また,せん妄状態にある患者とそうでない患者の動きの差分についてのケース・コントロールスタディの結果を報告する.さらに,コンピュータビジョンを入院病棟環境で用いる場合に特有の課題,懸念点,制約について報告をおこなう他,社会実装,普及へ向けた今後の展望についても紹介する.本演題の内容は,AMEDの課題番号 JP22uk1024008の支援を受ける内容を含む.