第42回日本磁気共鳴医学会大会

講演情報

一般演題

MRS-脳・脊髄

MRS-脳・脊髄

2014年9月18日(木) 15:10 〜 16:10 第2会場 (3F 源氏の間東)

座長:田岡俊昭(奈良県立医科大学附属病院 放射線科)

[O-1-031] 小児自閉スペクトラム症児におけるin vivo脳内代謝物濃度評価

富安もよこ1,2,3, 相田典子1,3, 野澤久美子1,3, 佐藤公彦1,4, 草切孝貴1,4, 村本安武1,4, 鈴木悠一1,4, 立花泰彦1,3, 松澤大輔2,3, 辻比呂志1, 清水栄司2, 小畠隆行1,3 (1.放射線医学総合研究所 重粒子医科学センター, 2.千葉大学大学院医学研究院, 3.神奈川県立こども医療センター 放射線科, 4.神奈川県立こども医療センター 放射線技術科)

【目的】自閉スペクトラム症(Autistic Spectrum Disorder: ASD)は対人コミュニケーションに問題のある障害である。遺伝的要素の強い脳機能障害とされるが、その病態生理に不明な点が多い。本研究は、臨床用3T MR装置(Siemens)を用いたin vivo 1H MRS法により自閉症児における脳内主要代謝物(N-アセチルアスパラギン酸、コリン、クレアチン、グルタミン酸/グルタミン、ミオ‐イノシトール)およびγ-アミノ酪酸(GABA)の濃度を得て、ASD児と代謝物濃度との関連性を調べることを目的とした。 【方法】対象は、通常の臨床MR(T1-, T2強調、拡散強調)画像で所見が無い(器質疾患が無い)ASD児13名(3.7 ± 1.1歳, 範囲2-6歳)である。シーケンスはPRESS(TE/TR = 30/5000 ms)およびMEGA-PRESS(GABA測定用、TE/TR = 69/1500ms)を用いた。選択領域は基底核(10.6-23.0ml)、半卵円中心(12.9-25.5ml)および小脳(10.0-37.5ml)とした。MEGA-PRESSでは基底核および小脳領域のみを測定した。定量解析はLCModelおよびMATLAB上で動作する自作のソフトウェアで行った。また健常児童6名(7.0 ± 3.7歳, 範囲1-11歳)を対照児童群とした。 【結果】ASD児群は対照群と比較して、半卵円中心においてChoが有意に高かった(unpaired t-test, p<0.02)。他の領域、代謝物については有意な差はみられなかった。 【考察・結語】Cho高値は複数の灰白質領域においては報告があり、その理由としてグリア細胞の増加または膜代謝の亢進が挙げられている(文献1, 2)。白質におけるCho高値の報告はこれまでに無く、より詳細な研究によりASDの新たな生理学的要因が明らかになる可能性がある。今後は対象児数を増やすとともに、ASDの重症度や他の画像情報(拡散テンソル画像など)などとCho濃度変化との関連性を調べる予定である。文献 1. Arch Gen Psychiatry 2002;59:885-891. 2. Biol Psychiatry 2003;54:1355-66.