第42回日本磁気共鳴医学会大会

講演情報

ポスター

送受信回路改善

送受信回路改善

2014年9月19日(金) 15:18 〜 16:00 ポスター会場 (5F ロビー)

座長:白猪亨(株式会社日立製作所 中央研究所)

[P-2-142] 超低磁場MRIにおける光ポンピング原子磁気センサと直交位相フラックストランスフォーマを用いたSNRの改善

笈田武範, 武藤正人, 小林哲生 (京都大学大学院工学研究科 電気工学専攻)

【背景・目的】近年,他のモダリティとの融合や小型軽量化などの理由から,超低磁場MRIの研究が注目されている.超低磁場MRIを実現するためには,超伝導量子干渉素子(superconducting quantum interference device : SQUID)や光ポンピング原子磁気センサ(optically pumped atomic magnetometer : OPAM)などを用いて,低周波の微弱磁場を検出する必要がある.OPAMはアルカリ金属蒸気を封入したガラスセルにポンプ光・プローブ光2つのレーザを照射し,光ポンピングされたアルカリ金属原子の電子スピン偏極による磁気光学回転により磁場を計測する.OPAMは,SQUIDでは必須の冷媒が不要であり,維持コストなどの面で利点がある.しかしながら,アルカリ金属原子の電子スピン偏極の磁気回転比は,MRIにおいて主に計測対象となるプロトンの約164倍であるため,同一磁場中に試料およびガラスセルを設置すると,共鳴周波数の不一致により計測感度が低下する.この問題に対して,フラックストランスフォーマ(flux transformer : FT)を用いた遠隔計測法が提案されている.先行研究において,単一FTを用いたMR信号計測では,信号対雑音比(signal-to-noise ratio : SNR)が最大となるコイルのパラメータが存在する一方,その感度に限界があることが報告されている.本研究では,直交位相FTを用いることにより,OPAMを用いた遠隔MR信号計測のSNR向上を目指す.
【方法】直交位相FTとして,鞍型コイルペアを入出力コイルとするFTをコイルペアの円筒の軸の回りに90°回転した2組のFTを用いた時の間接MR信号計測について,磁場分布の数値解析および擬似MR信号計測を用いてSNRを評価し,OPAMと直交位相FTを用いた間接MR信号計測の有効性を確認した.
【結果・結論】数値解析の結果,直交位相FTを用いることにより単一のFTを用いた場合と比較して,約2倍のSNRが得られることが確認された.また,擬似MR信号計測の結果においてもSNRの向上が確認され,直交位相FTを用いることによりOPAMを用いた遠隔MR信号計測のSNR向上が可能である事が示された.