第42回日本磁気共鳴医学会大会

講演情報

シンポジウム

シンポジウム2

DDSとMRIトレーサーの現状

2014年9月18日(木) 15:30 〜 17:20 第1会場 (5F 古今の間北・中)

座長:青木伊知男(放射線医学総合研究所 分子イメージング研究センター)

[S2-3] 合成高分子をキャリアーとしたMRI造影剤とその応用

横山昌幸, 白石貢一 (東京慈恵会医科大学総合医科学研究センター 医用エンジニアリング研究部)

 疾患部位に選択的に分布する造影剤が開発されれば、診断に有用であることは、MRIに限らず早くから認識され、主に抗体などのがん特異的リガンドに放射性同位元素を結合させた複合体による研究、開発がなされてきた。一方、MRI造影剤に疾患部位、例えば癌選択性を持たせようという試みは、1990年代以降と比較的遅く始められた。理由は、放射性同位元素に比べると造影剤の必要量が大きい(数十mg以上)MRI造影剤では、抗体に結合させると抗体量が数g以上にも達してしまうため実現不可能(1990年代では抗体のコストのため、その後は抗体の生体への毒性懸念のため)であった。必要量の大きなMRI造影剤では、リポソーム、合成高分子や高分子ミセルのように造影剤を多量に結合・封入できるキャリアーシステムの開発と、それが固形がんの場合のEPR効果等ターゲティング方法論の確立が必要であった。講演者は、合成高分子より形成するミセル構造をMRI造影剤として研究してきた。多くのGdイオンを結合させることと、GdイオンのT1緩和能を高くするための高分子設計を述べる。 部位選択的MRI造影剤が目指すもの二つあり、その第一は、より精密な疾患画像取得である。固形がんの場合であれば、より微小な癌の発見と、がんと正常部位のより明確な判別である。目指すものの第二は、画像診断と化学療法選択が一体となった医療の実現である。固形がん治療ではあるMRI造影剤で疾患部位がコントラスト高く造影されれば、その患者には同じキャリアーを用いたターゲティングが効率よく働くと考えられ、数ある選択肢の中でこの抗がん剤ターゲティング療法を合理的に選択できることとなる。診断と治療を融合して実施するTheranosticsの一つの方法である。本講演では、対象疾患として固形がんと急性脳梗塞への応用を述べる。