第42回日本磁気共鳴医学会大会

講演情報

シンポジウム

シンポジウム4

拡散強調MRIで何が見えるか-水透過性と灌流の可視化-

2014年9月19日(金) 13:40 〜 17:20 第1会場 (5F 古今の間北・中)

座長:押尾晃一(慶應義塾大学医学部 放射線診断科), 小畠隆行(放射線医学総合研究所 重粒子医科学センター)

[S4-3] 水分子動態可視化技術の開発とアクアポリンの役割

安井正人 (慶應義塾大学医学部 薬理学教室)

体内水分バランスは、生体の恒常性維持機能の最も重要な調節機構である。水分バランスの不均衡は、様々な病態に伴って認められ、その補正が治療上有効となることが多い。水チャネル、アクアポリン(AQP)の発見は、体内水分バランスや分泌・吸収に対する我々の理解を分子レベルまで深めることとなった。 腎臓における尿の濃縮、希釈はもちろんのこと、涙液、唾液の分泌等にも重要な働きをしている。我々は、アクアポリンの水分子選択的透過性やその生物学的意義を解明するため、水分子イメージングの技術開発や計算機科学による水分子シミュレーションの技法を取り入れ、生体内水分子動態に対する理解を深めてきた。具体的には、CARS(coherent anti-Stokes Raman Scattering)顕微鏡を用いた単一細胞の水拡散イメージングや、Twin-scan装備型2光子励起共焦点顕微鏡を用いて細胞内局所における物質拡散をイメージングする技術を開発した。CARS顕微鏡は、O-H結合が持つ固有振動数に対して光の共鳴現象を起こすことで信号を増幅し、水分子の直接イメージングを行うことができる。今回我々は、MDCK細胞の3次元培養を行なうことでシストを形成させ、そのシストを用いてCARS顕微鏡による細胞膜および経過上皮水透過性の測定を行なった。さらに、溶液、細胞内およびシスト腔内におけるCARS水分子シグナルの経時的変化についての多重シェル型3コンパートメントモデルを用いたコンピューターシミュレーションを行い、パラメータの最適化し、上皮における細胞膜および細胞間隙の水の透過性を決定することに成功した。また、AQPを安定発現した細胞を用いることで、AQPの細胞膜拡散における役割も検討した。