09:50 〜 10:05
[DP-03] 共有意思決定を用いた関わりにより生活機能の改善を認めた慢性疼痛を有する訪問リハビリテーション事例
【はじめに】
慢性疼痛患者と医療者が共同で治療を決めることは,疼痛の軽減や高い生活機能と関連すると報告されている.しかし,これら二者間で痛みに対する信念が異なる場合,希望する治療が一致しにくいことも経験する.本報告の目的は慢性疼痛患者との適切な合意形成について,共有意思決定を用いた実践例の考察から検討することである.
【事例】
事例は腰椎破裂骨折により入院し,退院後にIADLの向上を目的に訪問リハを開始した80歳代の女性である.初期評価では屋内独歩自立であったが右大腿部にNRS 4~7の痛みがあり,Frenchay Activities Index(FAI)は4点と低値であった.治療に対しては自己決定の意向が強く,「痛みを減らしてほしい」と徒手的治療を希望した.また,患者教育や運動療法には「痛いのに自分で動く気になれない」と強い抵抗感を示し,合意には至らなかった.
【病態解釈と仮説】
本事例は痛みに対する偏った信念を有しているため,療法士との合意に至りにくいと考えた.そこで適切な痛みの信念と治療態度の変容を目指すために,患者が認識する痛みの信念に配慮した共有意思決定にて再度,治療内容の検討を行った.
【経過】
共有意思決定は,①痛みの信念に配慮した選択肢の提示,②各選択肢の益と害の説明,③事例の希望の考慮,④療法士の意見も踏まえた治療内容の合意という手順で実施した.治療内容は事例が希望するストレッチを中心とし,徐々に療法士の推奨する患者教育や認知神経リハの視点を含めた運動療法を併用しながら計6回実施した.1ヵ月後,「気長に痛みと付き合っていかないと」と訴えが変化し,NRSは0〜8と十分な改善を認めなかったが,FAIは家事の実施に伴い13点に改善し訪問リハを終了した.
【考察】
意思決定への関与を希望する慢性疼痛患者との合意形成場面では,痛みの信念に配慮した共有意思決定を実施することで,既存のエビデンスを適用しやすくなり,IADLなどの生活機能の向上につながる可能性がある.
慢性疼痛患者と医療者が共同で治療を決めることは,疼痛の軽減や高い生活機能と関連すると報告されている.しかし,これら二者間で痛みに対する信念が異なる場合,希望する治療が一致しにくいことも経験する.本報告の目的は慢性疼痛患者との適切な合意形成について,共有意思決定を用いた実践例の考察から検討することである.
【事例】
事例は腰椎破裂骨折により入院し,退院後にIADLの向上を目的に訪問リハを開始した80歳代の女性である.初期評価では屋内独歩自立であったが右大腿部にNRS 4~7の痛みがあり,Frenchay Activities Index(FAI)は4点と低値であった.治療に対しては自己決定の意向が強く,「痛みを減らしてほしい」と徒手的治療を希望した.また,患者教育や運動療法には「痛いのに自分で動く気になれない」と強い抵抗感を示し,合意には至らなかった.
【病態解釈と仮説】
本事例は痛みに対する偏った信念を有しているため,療法士との合意に至りにくいと考えた.そこで適切な痛みの信念と治療態度の変容を目指すために,患者が認識する痛みの信念に配慮した共有意思決定にて再度,治療内容の検討を行った.
【経過】
共有意思決定は,①痛みの信念に配慮した選択肢の提示,②各選択肢の益と害の説明,③事例の希望の考慮,④療法士の意見も踏まえた治療内容の合意という手順で実施した.治療内容は事例が希望するストレッチを中心とし,徐々に療法士の推奨する患者教育や認知神経リハの視点を含めた運動療法を併用しながら計6回実施した.1ヵ月後,「気長に痛みと付き合っていかないと」と訴えが変化し,NRSは0〜8と十分な改善を認めなかったが,FAIは家事の実施に伴い13点に改善し訪問リハを終了した.
【考察】
意思決定への関与を希望する慢性疼痛患者との合意形成場面では,痛みの信念に配慮した共有意思決定を実施することで,既存のエビデンスを適用しやすくなり,IADLなどの生活機能の向上につながる可能性がある.