第53回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスター

術後遠隔期・合併症・発達

ポスター (III-P38)
術後遠隔期・合併症・発達 3

2017年7月9日(日) 13:00 〜 14:00 ポスターエリア (1F 展示イベントホール)

座長:佐川 浩一(福岡市立こども病院 循環器科)

13:00 〜 14:00

[III-P38-05] 僧帽弁置換術後の血栓弁に対しrecombinant tissue plasminogen activatorによる血栓溶解療法を施行した9ヵ月男児

大島 康徳1,2, 鬼頭 真知子1,2, 森 啓充1, 森鼻 栄治2, 河井 悟1, 安田 和志1 (1.あいち小児保健医療総合センター 循環器科, 2.あいち小児保健医療総合センター 新生児科)

キーワード:乳児, 弁置換術後, 血栓溶解療法

【背景】人工弁置換術後の人工弁機能不全は急速な循環不全を来しうる。緊急手術の適応とされてきたが、その原因が血栓である場合は血栓溶解療法が奏功する可能性がある。僧帽弁置換術後の血栓弁に対しrecombinant tissue plasminogen activator(rt-PA)による血栓溶解療法が有効であった乳児例を報告する。【症例】9ヵ月男児。4ヵ月時に乳児特発性僧帽弁腱索断裂のため僧帽弁置換術(inverted SJM 17A)施行。術後心機能の回復は良好であったが、ワーファリンコントロールに難渋。退院時(術後36日)のPT-INRは2.7で、外来では1.4-2.0と低値。同時期に最大左室流入血流速度が1.0→1.8m/sへ上昇、退院後1.5ヵ月(術後2.5ヵ月)のX線透視で一葉の閉鎖位固定(immobile)を認め緊急入院。PT-INR低値の時期の人工弁機能不全であり、原因は血栓性であると判断し血栓溶解療法を選択。PT-INR値や心エコー所見より発症から24~32日経過していると判断。循環不全は軽度のため、低用量rt-PA(0.1mg/kg/h)の持続投与を行ないヘパリンを併用した。64時間の投与後、X線透視で可動性改善を確認した。rt-PAは中止し、ヘパリン、アスピリンを併用しワーファリゼーションを行ったがコントロール不良、PT-INR 1.2~2.1で推移、rt-PA中止後3週間のX線透視で血栓弁の再発(immobile)が判明。速やかにrt-PAを同様に投与再開、2日後のX線透視で改善を確認、ワーファリンターゲットを上げて管理(PT-INR 2.5-3.0)後はleafletの可動性は良好に維持された。一連の副作用として重篤な出血性合併症は認めなかった。【まとめ】小児の血栓症に対する血栓溶解療法の頻度は増えている。本邦で使用可能な血栓溶解薬はウロキナーゼとrt-PA製剤であるが、rt-PAはフィブリンとの親和性が高いため血栓溶解効果が高く、出血性副作用のリスクは低い。病態に応じた投与法の選択により乳児の血栓弁に対しても安全で効果的な血栓溶解療法を行うことが可能となる。