[I-OR21-02] 乳児期発症拡張型心筋症の遠隔期左心機能と心電図所見
キーワード:拡張型心筋症, T波, 左室逆リモデリング
【背景】乳児期に拡張型心筋症(DCM)を発症し、心機能が改善した患者の遠隔期の左室機能についての情報は少ない。【目的】乳児期発症のDCMの左心機能改善例における遠隔期左心機能と心電図所見について検討した。【対象と方法】1999年から2012年までの2歳未満発症DCMの心機能が改善した18例 (男8 女10) において、遠隔期のBNP値、断層心エコー図(2DE)による左室拡張末期径(LVDd、% of normal)、左室短縮率 (LVFS)、12誘導心電図(ECG)所見について、診療録から後方視的に検討した。心臓移植と心臓再同期療法施行症例は除外した。【結果】DCM発症は4~17か月(中央値6か月)で、遠隔期評価時年齢は5~17歳(中央値6歳)であった。全例外来で経過観察中で、初回入院以降心不全のための入院履歴はなかった。遠隔期では、16例が内服中、2例では内服が中止されていた。内服薬はβブロッカー16例、アンジテンシン変換酵素阻害薬14例であった。診断時のBNPは6~7,535pg/ml(中央値1,792)であったが、遠隔期全例50pg/ml で、16例(89%)は20 pg/ml未満であった。2DEでは、LVFS16~42%(中央値31)で、LVDdは30~69mm(中央値44)、86~141%of normal(中央値111)であった。LVDdの絶対値は経過中、心機能の改善に伴い縮小し、成長に伴い再拡大した例が10例にみられた。LVDd% of normal は全例遠隔期に低下したが、再拡大は2例にみられた。遠隔期のECGでは、胸部誘導V5の陽性T波は16例に、平坦T波は1例にみられた。他の1例は完全右脚ブロックパターンであった。発症時V5の陰性T波が遠隔期陽性T波に変化している症例が10例みられた。【まとめ】乳児期発症DCMは原因が多様であり、改善の経過も様々であった。改善例は遠隔期においてLVFSは保たれ、ECG所見の改善がみられ、左室の逆リモデリングがみられていた。しかし、LVDdの拡大残存例や体格の成長に伴いLVDdも増大する症例があった。