[III-MOR14-03] 胎児診断された血管輪の出生後臨床経過
キーワード:血管輪, 胎児診断, 気道狭窄
【背景】血管輪は大動脈弓の発生異常により気管・食道を血管構造物が取り囲む疾患で、新生児期に気道・食道狭窄症状を呈する症例から無症状で経過する症例まで様々である。近年は胎児心エコー検査の普及に伴い、胎児診断例が増えているが、出生後経過に関する詳細な報告は少なく、特に無症状例に対する管理方法は定まっていない。【目的】胎児診断された血管輪の臨床像を明らかにし、今後の管理方法を再考する。【対象と方法】2011年から2017年までに血管輪と胎児診断され、当院で出生した14例を対象とし、出生後の臨床像を後方視的に検討した。【結果】男児10例女児4例で、平均在胎週数は38週、平均出生体重は2949gだった。14例中10例は現在も当科管理中であり(観察期間は3日-55か月)、2例は転院、2例は8か月時、1歳8か月時に管理を中止していた。14例中7例で出生後CT・MRI検査を施行し、いずれも胎児診断通りだった。血管輪のタイプは右大動脈弓+ Kommerell憩室(RAA+Kommerell)が10例と最も多く、重複大動脈弓(DAA)と右大動脈弓+左動脈管が2例ずつだった。経過中に3例で気道狭窄症状を呈した。症状出現時期はそれぞれ、出生直後、3か月、5か月頃であり、2例で血管輪解除術を要した。1例はRAA+Kommerellで出生直後に著明な喘鳴を認め、日齢4に手術を施行した。もう1例もRAA+Kommerellで心房中隔欠損症を合併していた。体重増加不良も認め11か月時に心内修復術と併せて血管輪解除術を施行した。手術未施行例はDAAで気道症状は軽度な為、現在(1歳5か月)も経過観察中である。【考察】本検討における胎児診断精度は高く、無症状例に対するCT・MRI検査の適応については再検討を要する。また、有症状例はいずれも1歳未満に症状が出現し、過去の報告においても手術施行例の多くは乳児期までに症状が出現している。症状出現のリスク評価に基づく適切な管理を行うには、長期予後を含めた更なる症例の蓄積・検討が必要である。