第54回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスターセッション

心不全・心移植

ポスターセッション14(P14)
心不全・心移植 1

2018年7月5日(木) 18:00 〜 19:00 ポスター会場 (311+312+313+315)

座長:小野 博(国立成育医療研究センター 循環器科)

[P14-05] 補助循環を用いた小児心原性ショック例に対するBridge to Candidacy~この症例をどうするか?外科治療へのアプローチ~

荒木 幹太, 上野 高義, 平 将生, 木戸 高志, 松長 由里子, 金谷 知潤, 奥田 直樹, 倉谷 徹, 戸田 宏一, 澤 芳樹 (大阪大学大学院医学系研究科 心臓血管外科)

キーワード:機械的循環補助, BiVAD, Bridge to Candidacy

【背景】
心原性ショックに陥った小児患者に対しては,まず頸部,又は大腿部からの機械的補助循環(MCS)を導入し救命をはかるのが一般的である.しかし,高度心不全例や難治性不整脈合併例では,肺うっ血や肺出血を認める事もあり,充分な左心系の脱血を要する場合がある.
また,心機能回復の可能性を見極める場合には,長期のMCSが必要となる事もあり,Bridge to Candidacyを見据えた循環サポートが必要となる.
そのため,小児のMCSを行う際には,時期を逸さない,状況に応じた循環サポートが必要となる.
【症例】
9歳男児(身長130cm,体重27kg,BSA 0.99cm2).生来健康.
自宅近くで突然倒れ,bystander CPR下に当院救急搬送され,大腿動静脈からのMCSを開始した.解剖学的心疾患は認めず,左室壁運動の低下,左室の緻密化障害,及び左室壁肥厚などを認め,心筋症による心原性ショックを考え,大腿動静脈からのMCSでは低灌流量(37-48ml/kg/min)による心外臓器障害の進行,肺うっ血の増悪が懸念された為,同日中に開胸下のMCSに変更した.
左室心尖脱血,上行大動脈送血の人工肺を挟んだ遠心ポンプによるLVADを開始したが,循環サポート直後より肺出血の増悪を認めた為,肺血流を制御するために右房脱血を追加した.
しかし,右房脱血を充分に行うことにより,左心系への還流量が減少し,左室心尖脱血管の血栓形成を認めた為,術翌日にBiVADシステムへの変更を要した.
肺出血を考慮した遠心ポンプによる右房脱血,左房送血のRVADを追加する事により,心外臓器機能の維持,及び肺出血の治癒が可能となった.
心筋の病理所見では,炎症細胞の浸潤はなく,軽度の線維化を認めるのみであった.
経過中軽度の脳血管合併症を認めたが,MCSサポートにより心肺機能は改善し,MCS装着後10日目に離脱可能となった.現在,外来通院にて内科的心不全治療を継続中である.
【まとめ】
患児の状態に応じた循環サポート方法を遅滞なく変更することでMCS離脱を行い得た症例を経験した.