[I-PD03-2] 慢性心筋炎と炎症性拡張型心筋症
キーワード:心筋症, 心筋炎, 生検組織診断
拡張型心筋症(dilated cardiomyopathy: DCM)は様々な病因・病態の混合した疾患群の総称であり、慢性心筋炎は主要な原因の一つとされてきた。心筋炎はウイルス感染に起因する自己免疫反応によると理解され、一般に一過性経過をとるが、何らかの免疫機構の破綻あるいはウイルスの持続感染により、慢性心筋炎となり、DCMに移行する症例があると考えられる。慢性心筋炎は、ステロイドや免疫抑制剤によって病変の進行を抑制し、人工心臓や心臓移植を必要とする重症心不全への移行を予防することが期待できる。日本循環器学会の「急性および慢性心筋炎の診断・治療に関するガイドライン(2009年改訂版)」では、慢性心筋炎を、急性心筋炎として発症し炎症が持続する遷延性慢性心筋炎と、気づかないうちに心筋炎を発症し拡張型心筋症に移行する不顕性慢性心筋炎の2型に分け、確定診断法は心筋生検組織診断としているが、客観的診断基準は示されていない。一方、種々の病態で慢性炎症が注目されるに伴い、心臓でも組織に炎症細胞浸潤を伴う炎症性拡張型心筋症inflammatory DCM(iDCM)という疾患群が主にヨーロッパから提唱されるようになった。しかし、ヨーロッパの炎症性心筋疾患の概念は日本と異なり、心筋炎以外のいわゆる拡張型心筋症で、何らかの遺伝子異常を持つ脆弱な心筋細胞が壊死に陥り、惹起された炎症がさらに心不全を悪化させる悪循環に入った病態にもiDCMという言葉を用いている可能性があり、概念・用語は混乱している。そこで、日本の現状を把握し、分子マーカー発現に基づいた慢性心筋炎の組織診断基準を策定するために、我々は日本循環器学会と連携して成人慢性心筋炎のレジストリー構築を開始した。慢性心筋炎は、元来、小児慢性特定疾患に指定されているため、小児心筋炎の実態調査を行うことを次の目標としている。