第56回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

デジタルオーラル

外科治療

デジタルオーラル(I)26(OR26)
外科治療1

指定討論者:白石 修一(新潟大学大学院医歯学総合研究科 呼吸循環外科学分野)
指定討論者:野村 耕司(埼玉県立小児医療センター 心臓血管外科)

[OR26-3] 心室中隔欠損を伴わない肺動脈閉鎖症での境界型右室低形成の対するTricuspid Valve Recruitment

松島 峻介1, 松久 弘典1, 日隈 智憲1, 長谷川 翔大1, 和田 侑星1, 山口 眞弘2, 大嶋 義博1 (1.兵庫県立こども病院 心臓血管外科, 2.加古川中央市民病院 心臓血管外科)

キーワード:純型肺動脈閉鎖症, 境界型右室低形成, 三尖弁形成術

【目的】心室中隔欠損を伴わない肺動脈閉鎖症(PAIVS)に対する術式選択に右室容量(RVEDV)と三尖弁径(TVD)から算出したRV-TV index(RTi) = RVEDV(%N) × TVD(%N) × 0.0001を我々は提唱してきた.当方針での境界型右室低形成(RTi, 0.1-0.4)において,三尖弁をより活かす治療戦略を遠隔成績から考察した.
【方法】1989年から2018年で当院にて手術介入したPAIVSおよび重症肺動脈弁狭窄84例の内,境界型右室低形成への治療として4-6mm開窓付き心房中隔欠損閉鎖(fASD),三尖弁手術(TVP)またはグレン吻合(Glenn)を行った症例を対象とした.同期間中これらの手技なく2心室修復した23例,Ebstein奇形合併から右室・TVDが拡大しCone手術を行った2例は除外した.
【結果】fASDを11例(RTi, 0.21-0.68; TVD, 46-99%N),fASD+TVPを5例(RTi, 0.17-0.26; TVD, 50-63%N),TVPを4例(RTi, 0.29-0.49; TVD, 55-62%N),Glennを4例(RTi, 0.16-0.39; TVD, 39-59%N),fASD+TVP+Glennを2例(RTi, 0.35-0.40; TVD, 71-75%N),fASD+Glennを1例(RTi, 0.15; TVD, 56%N)に施行した.TVPは11例全例で交連切開を2方向に加え4例は乳頭筋切開も追加,生じた閉鎖不全制御に4例で人工腱索, 1例でEdge-to-Edge縫合を用いた.観察期間は16±8.5年.死亡を心筋虚血にて2例に認めた.1心室へのconversionを3例(術前RTi, 0.32-0.40; 術前TVD, 47-55%N),1.5心室へのconversionを2例(術前RTi, 0.15-0.22; 術前TVD, 55-64%N),再TVPを2例(弁置換, 1: 前尖パッチ補填, 1)に要した.生存全例でNYHA I度かつ三尖弁閉鎖不全症はmoderate以下であり, 2心室14例のTVDは術前60±14%Nから最終80±15%Nへ有意に増加した(p=0.003).
【結論】境界型右室低形成に対してfASD下に,低TVD例では術中に三尖弁開口径を計測し交連切開にて開口がTVD 60%N以上得られれば2心室修復が,TVD 50-60%Nを得られれば1.5心室修復が可能であり,TVD 50%N以下であれば1心室修復が妥当と考えられた.