The 56th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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デジタルオーラル

術後遠隔期・合併症・発達

デジタルオーラル(II)47(P47)
術後遠隔期・合併症・発達4

指定討論者:泉 岳(北海道大学 小児科)

[P47-3] 内臓錯位症候群の脾機能低下と重症細菌感染症のリスクについての後方視的検討

井上 秀太郎, 中野 克俊, 中川 良, 浦田 晋, 朝海 廣子, 松井 彦郎, 犬塚 亮 (東京大学医学部附属病院 小児科)

Keywords:内臓錯位症候群, 脾機能低下, 重症細菌感染症

【背景】ワクチン接種や抗菌薬予防内服により、無脾症患者の重症細菌感染症 (SBI) は減少したものの、ワクチンでカバーされていない莢膜抗原型を有する肺炎球菌や抗菌薬耐性を持つ細菌感染が増加している。一方で、脾臓を有する内臓錯位症候群でも脾機能低下がある可能性やそのSBIのリスクはあまり知られておらず、感染対策に一定のコンセンサスが得られていない。【方法】2000-2019年に当科で内臓錯位症候群と診断された患者76症例を対象とし、画像検査による脾形態、血液像での脾機能低下を示唆する所見 (Howell-Jolly小体や標的赤血球の出現の有無)、SBIの既往について後方視的に検討した。【結果】患者のフォロー期間の中央値は35ヶ月で死亡例は17例であった。心耳形態は右側相同41例・左側相同34例、脾形態は無脾32例、多脾26例、正常脾8例、不明10例であった。無脾の19例 (59%)、多脾の4例 (15%), 正常の2例 (25%) でHowell-Jolly小体または標的赤血球が検出された。SBIは無脾の9例 (28%)、多脾の7例 (27%)、正常の2例 (25%) で認められ、SBIによる死亡例は2例であった。SBIのうち6例は、脾機能低下が寄与していると考えられ、2歳未満の発症がほとんどであった。この6例のうち無脾を除いた4例で、Howell-Jolly小体や標的赤血球は検出されていなかった。【考察】当院では、無脾患者に対して2歳未満では発熱時の速やかな抗菌薬投与、2歳以上でPPV23接種を行い、脾臓を有する場合はHowell-Jolly小体の出現があれば追加の予防接種を検討していた。今回の結果では、脾臓を有する場合でも脾機能低下が約26%で示唆された。また、Howell-Jolly小体や標的赤血球が陰性の症例でもSBIが発生しており、これらの所見が脾機能低下の予測因子として不十分なことが示唆された。今後は内臓錯位症候群全例でのPPV23接種や、脾臓を有する場合でも発熱時の積極的な抗菌薬投与を考慮してもよいかもしれない。