[P86-4] 低出生体重児のPDA手術において動脈管が同定できず左肺動脈を結紮し,再手術にて肺動脈修復と動脈管再結紮した1例
キーワード:新生児, 動脈管開存症, 手術療法
【はじめに】PDAにおいて動脈管が大動脈弓よりも太く、重なり、非常に識別困難であった症例を報告する。【症例】当科は,2010年から2017年までに26例の極低出生体重児(1500g以下)に対する開存動脈管の結紮術を施行してきた.手術死亡はなく,最近3年間の症例数は,13例で,ガイドラインの手術件数施設分類では,多い施設A群にはいる.当症例は,出生時在胎33週と1日,双子で出生した体重1908gの男児,当院新生児内科に緊急入院した.超音波検査では動脈管の流量は多く,インダシン投与にても閉鎖せず,日齢10,体重1907gにて手術を施行した.左第3肋間前方開胸をすると大動脈弓は認めたが,通常の迷走神経の横に動脈管をみいだせなかった.大動脈弓の内側尾側を剥離し,同部から左肺に流入する青い色調の血管を動脈管と判断して1号絹糸で二重結紮した.循環動態や酸素濃度に変動はなかった.術後エコー検査にて動脈管は開存し,左肺動脈血流が認められなかった.左肺動脈を結紮したと判断し,3時間後に再手術を施行した.大動脈弓を精査すると大動脈よりも著明に太い径8mmの動脈管が5mm径の弓部大動脈の前方に重なっており,両者間の結合織を剥離してPDAをようやく同定した.左肺動脈結紮糸による遮断を解除して同肺動脈の血流再開を確認.太い動脈管を1号絹糸で二重結紮した.結紮部位で血管がくびれて血管の両端が接するため,動脈管の再疎通を危惧して結紮部位にダクロンテープを介在させた.再手術後経過は順調.結紮前の動脈管の径は8mmで,径5mmの大動脈とは断面積で2.56倍大きかった.その動脈管が大動脈弓の側方に覆いかぶさって大動脈弓を隠したため,動脈管自体を大動脈弓と誤認した.もし,初回の血管遮断にクリップを使用していたとしたら安全に除去できたかは不明である.【結語】我々は,この症例以前にも以後にも同じような症例を経験していないが,知っておく必要のある病態と考え報告した.