第57回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

デジタルオーラル

心筋心膜疾患

デジタルオーラルI(OR19)
心筋心膜疾患

指定討論者:小垣 滋豊(大阪急性期・総合医療センター)
指定討論者:武田 充人(北海道大学病院)

[OR19-2] 小児急性心筋炎の回復後における心筋生検とT1-mapping解析 ~心機能回復例はいつまで治療が必要か?~

石田 秀和, 石井 良, 成田 淳, 廣瀬 将樹, 江見 美杉, 吉原 千華, 上山 敦子, 石垣 俊, 大薗 恵一 (大阪大学大学院 医学系研究科 小児科学)

キーワード:急性心筋炎, 心筋線維化, T1 mapping

【背景】
小児急性/劇症型心筋炎は、集中治療管理や機械的循環補助(MCS)の進歩によって救命できる症例が増加している。急性期からの回復後は、心エコーや心臓カテーテル検査所見、BNP値について正常化する症例もしばしば認められるが、そのような症例における長期的な抗心不全薬治療の必要性についての定まった報告はない。
【目的】
小児急性心筋炎回復後における心筋線維化について、組織学的あるいはMRIによる解析を行うことで、長期的治療方針の参考となる知見を得る。
【対象と方法】
当院で診療した18歳未満の急性/劇症型心筋炎症例のうち、回復後に心筋生検による組織学的解析と心臓MRI検査を同時期に行った9症例(2018-2020年に施行)を対象に、患者背景や心筋組織線維化率、native T1値、Extra Cellular Volume (ECV)について後方視的に解析した。
【結果】
女7例、男2例。発症年齢中央値は4歳(8カ月-16歳)、MCS使用例が4例、発症から心筋生検・MRIまでの期間中央値は12カ月(1-266か月)であった。全例でACE阻害薬やβ遮断薬は継続して投与されていた。心筋生検では全例で間質線維化が残存しており、特にMCS使用例で有意に線維化率が高く(22.8% vs 10.8%; P=0.027)、ECVも高かった(39% vs 31%; P=0.016)。組織線維化率とnative T1値、ECVを比較すると、相関係数rはそれぞれ0.38と0.77であり、心筋症における我々の既報と同じくECVの方が組織線維化率と高い相関を示した。さらに発症からの期間とECVとの相関係数rは-0.70であり、時間経過ともに改善していく可能性が示唆された。
【考察】
本研究では同一症例を長期に同一モダリティでフォローしたわけではないため限界がある。心筋炎回復後は、心エコー、BNP等が正常であっても、中期的には心筋線維化が残存しており抗心不全薬の継続が望ましいかもしれない。また、組織線維化率とECVはよく相関しており、フォローアップにおける造影MRIの有用性が示唆された。