第57回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

デジタルオーラル

外科治療

デジタルオーラルII(P52)
外科治療 5

指定討論者:小谷 恭弘(岡山大学心臓血管外科)
指定討論者:宮本 隆司(新生会 児玉経堂病院)

[P52-4] Fontan到達後に大動脈弁逆流により左室拡大を来し大動脈弁閉鎖術を施行した左室低形成症候群の2例

寶亀 亮悟, 新川 武史, 松村 剛毅, 島田 勝利, 前田 拓也, 吉田 尚司, 新浪 博士 (東京女子医科大学 心臓血管外科学講座)

キーワード:Fontan, HLHS, 大動脈弁閉鎖

【背景】左心形成症候群のバリエーションの中で大動脈弁逆流(AR)・僧帽弁逆流(MR)を合併することは稀である。逆流により無機能左室の拡大を来し手術を要した2例を経験したので報告する。【症例1】症例は4歳男児。胎児エコーで心疾患が疑われ出生後に大動脈弁狭窄症兼閉鎖不全症・僧帽弁狭窄症兼閉鎖不全症を伴う左室低形成症候群亜型の診断に至る。段階的に修復術を行い2歳時に心外導管型TCPC手術を行った。Fontan到達後よりARの悪化に伴う悪化無機能左室拡大を認め、右室圧排所見を認め手術の方針となった。手術は大動脈弁をプレジェット付ポリプロピレン糸で直接閉鎖、僧帽弁は弁前尖を切除後に、4mm開窓部を設けた0.6mm ePTFEパッチを弁輪に縫着し閉鎖した。術後14日に自宅退院となる。術直後エコーで左室への流入血流は消失し左室の縮小を認め、術後1年のカテーテル検査でも左室への流入血流は認めなかった。【症例2】19歳男性。出生後にチアノーゼを契機に施行した心臓超音波検査で、左室低形成症候群診断に至る。段階的に修復術を行い3歳時にlateral tunnel型TCPC手術に到達した。17歳頃より上室性不整脈、18歳時より易疲労感など心不全症状が出現しTCPC conversionを検討しカテーテル検査施行した。native ARを3度認め、左室への流入血流により左室容積の拡大を認めた。22mmのePTFE人工血管でのTCPC Conversionに加えて左室への流入血流による右室への圧排の予防のために大動脈弁閉鎖・僧帽弁閉鎖も施行した。症例1と同様に大動脈弁はプレジェット付ポリプロピレン糸で直接閉鎖、僧帽弁は22mmのePTFE人工血管を切り開き中央部に4mm開窓部を設けたパッチで僧帽弁輪に縫着し閉鎖した。術後11日目に自宅退院。術後1ヶ月の造影CTで左室内腔の血栓化・縮小を確認した。【まとめ】大動脈弁逆流により無機能左室拡大を来したFontan到達後の左心低形成症候群2例に対し、大動脈弁・僧帽弁を閉鎖し左室縮小に成功した。