日本体育・スポーツ・健康学会第72回大会

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健康福祉研究部会 » 【課題A】 健康増進につながる体力・運動の在り方をいかに考えるか

健康福祉研究部会【課題A】口頭発表②

2022年8月31日(水) 11:00 〜 11:47 第9会場 (2号館2階22教室)

座長:朝倉 雅史(筑波大学)

11:32 〜 11:47

[健康福祉-A-06] Handbuch Gesundheitssport (2006) に示されたドイツのスポーツ健康科学研究による運動と健康増進・体力向上との関係についての研究的アプローチ(政,介,社)

*多田 茂1 (1. なし)

2006年版は、1998年版を全面的に改定したものになっている。いずれの版でも、K.Boes(フランクフルト、カールスルーエ)、W.Brehm(バンベルク)の二人が編者になり、ドイツ全域に展開された研究機関に籍を置くスポーツ健康科学、スポーツ医学、医学、公衆衛生、社会学、教育学、心理学を専門とする38名(第1版)、39名(第2版)の研究者たちが筆を取っている。また巻末には、1970年代に遡る約1330点(第1版)、1500点(第2版)の文献表が収められている。このように平面的、時間的両面からスポーツと健康の関係を捉えた研究として、ハンドブックは、それぞれ1990年代後半、2000年代半ばの視点から両者の関係を捉えたドイツのスポーツ健康科学研究について概観を与えるものとなっている。
 他方、第1版と第2版では、著者が半数近く入れ替わっている。第2版は編者自身が語るように、全体的に新たに健康スポーツのテーマを捉え直したものとなっている点が注目される。この間、10年に足らないとはいえ、21世紀に入っての健康とスポーツとの関係を巡る新たな状況の展開が基礎になっていることが予想される。編者たちの言葉によれば、それは社会法典第5巻における2000年の「予防に関する章」の法改定や、リスク因子発現の予防、病の早期発見、重症化の遅延のための包括的な法的基礎となる2004の「予防法」草案の策定として現れている。
 本発表では、以上のようなヘルスケアを巡る社会の動きを念頭において新たに編集されたハンドブック『健康スポーツ』の第2版(2006年)を論究の中心において、運動と健康増進・体力向上との関係について、ドイツのスポーツ健康科学研究がどのようなアプローチを試みているか、その際に研究の枠組みとなっている事項をまとめることで、議論の話題を提供していきたい。後期産業発展国として、日独両国は多くの課題を共有しており、示唆を受けることができる論点もあると考えられるからである。