日本体育・スポーツ・健康学会第72回大会

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健康福祉研究部会 » 【課題B】 認知機能の維持・改善に運動・スポーツはいかに貢献するか

健康福祉研究部会【課題B】口頭発表①

2022年9月1日(木) 09:00 〜 09:47 第8会場 (2号館2階21教室)

座長:樋口 貴広(東京都立大学)

09:32 〜 09:47

[健康福祉-B-03] 高齢者を対象とした移動物体との衝突予測評価(介,測,心)

インターセプト課題の有用性

*佐藤 和之1、福原 和伸1、樋口 貴広1 (1. 東京都立大学)

【目的】
安全な移動のためには、周囲の環境を適切に知覚し、衝突の有無などを正しく予測することが不可欠である。本研究では衝突予測スキルの評価として、ヴァーチャルリアリティ(VR)環境下でのインターセプト課題(Steinmetz ST, et al. 2020)の有用性、および予測スキルの年齢的差異に関連する要因を比較検討した。この課題では、移動物体と観察者間になす3つの角度情報(α角:互いの水平面上の位置関係 / γ・φ角:移動物体の拡大情報)を正確に利用した衝突予測が可能か評価できる。

【方法】
高齢者18名(73±5.4歳)、若年者12名(23.8±4.1歳)が参加した。Control条件、γ・φ・α外乱の4条件とし、各条件90試行(1ブロック30試行)実施した。γ・φ外乱条件とα外乱条件は別日に実施した。アウトカムに衝突予測の正確性を反映したスコアを求めた。統計解析は年齢・外乱条件・ブロックを要因とする3要因分散分析を実施した。高齢者はもともとα・γ・φ角の情報を利用していないため、若齢者のみが外乱による負の影響を受けるという仮説を立てた。

【結果】
γ・φ外乱条件にスコアにおいて、年齢と外乱種類に1次交互作用(F(2, 30)= 3.83, p= 0.02)を認め、若齢者におけるγ外乱条件がControl条件よりも低値であった。α外乱条件のスコアにはいずれの交互作用も認めなかったが、年齢(F(1, 30)= 45.59, p= 0.00)と外乱種類(F(1, 30)= 4.32 , p= 0.04)に主効果を認め、若齢者よりも高齢者、Control条件よりもα外乱条件で有意に低値を示した。

【考察】
仮説が一部支持され、高齢者は拡大情報(γ・φ)に対する外乱の影響を受けなかった。この結果は、高齢者における衝突予測においては、物体の拡大情報の貢献度が低い可能性が示唆された。これに対して、空間的位置関係(α)に対する外乱は、高齢者のパフォーマンスも低下させたことから、年齢を問わず衝突予測に利用される可能性が示唆された。