日本体育・スポーツ・健康学会第72回大会

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体育史/口頭発表④

2022年9月2日(金) 15:00 〜 15:35 第9会場 (2号館2階22教室)

座長:來田 享子(中京大学)

15:00 〜 15:35

[01史-口-04] 国民保健体操(初代ラジオ体操)の再現とその動きに関する一考察

*崎田 嘉寛1、当山 倫子2、近藤 雄大1、若槻 稜磨1、松浦 早希3 (1. 北海道大学、2. 神戸大学、3. 神戸市立葺合中学校)

本研究は、映像・音楽・図版資料に基づいて国民保健体操(1928年11月1日から1946年4月13日までNHKでラジオ放送)の第1・2を再現し、各運動の関節角度変位を三次元モーションキャプチャによって定量的に算出することで、動きの特徴を歴史的に考察することを目的とする。
 現時点で国民保健体操(第1・2)を通覧可能な映像は管見の限り確認できなかったため、本研究では大谷武一らがモデルとなった宣伝用映画の一部、及び第2回日本体操大会(1936)で簡易保険局員が披露した体操映像を主資料とし、補足的に戦前期の各種フィルムに映り込んだ国民保健体操の映像を活用した。音源については、1936年6月に発売された「ラジオ体操」(号令:江木理一)を使用した。以上の運動(動き)を確定する資料に、日本放送協会が指導者用に作成した図版(1937)で解説された指導ポイントを加味して、1級ラジオ体操指導士によって国民保健体操の第1・2の一連の動きを再現した。
 再現した国民保健体操については、第1の11運動、第2の11運動を対象とし、三次元モーションキャプチャ(QUALISYS社製、ヒューマンパフォーマンス研究所)によって測定した。具体的には、第1と第2の運動それぞれの動作時間を100%規格化し、関節運動(50種類)における角度変位の平均値(3回動作を計測)を算出した。その結果、例えば、第2の体幹ひねり動作(右回旋、左回旋)の角度変位の総和(1293.16deg)は、第1(609.08deg)と比較して約2倍の角度変位の総和であったこと等が明らかとなった。
 本研究の成果は、国民保健体操を同時代の映像資料等に基づいて学術的に再現したことである。また、国民保健体操における各関節運動の角度変位を測定することで動きの要素の一つが評価でき、数値化することで他の体操との類似点や相違点を比較可能とした。