日本体育・スポーツ・健康学会第72回大会

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ポスター発表(専門領域別)

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バイオメカニクス ポスター発表

2022年9月2日(金) 11:30 〜 13:00 第一体育館バスケ2 (第一体育館バスケ)

[05バ-ポ-01] スマートフォン内蔵センサを利用した跳び箱運動の測定評価

*村田 和隆1,4、市谷 浩一郎3,4、前田 正登2 (1. 太成学院大学、2. 神戸大学、3. 大阪電気通信大学、4. 神戸大学大学院)

器械体操熟練者2名を対象として、跳び箱運動の開脚跳びを行わせた。跳び箱の高さは140cm(12段相当)から200cm(18段相当)までの4段階とし、跳躍後に両足でマットに着地し、2秒間の静止状態が見られた試技を分析対象とした。被験者の腰部背面にスマートフォン(Galaxy S8,Samsung社)を入れたウエストポーチを装着させ、跳躍動作を2台のスマートフォン(Galaxy S9,Samsung社)のハイスピード機能を利用して240fpsで撮影を行った。撮影範囲は3m×14m×3.5mとし、範囲内に5箇所のマーカーを取り付けたポールを24箇所に立ててキャリブレーションを行った。撮影された跳躍動作の映像を基に、3次元DLT法により身体23点の3次元座標値を算出した。得られた3次元座標データから阿江(1996)の身体部分慣性係数を用いて、身体重心の3次元座標値を算出し、2階微分を行うことによって身体重心加速度を算出した。跳び箱運動中の加速度と角速度をスマートフォンのMATLAB Mobileアプリ(Mathworks社)を用いて100Hzで測定し、加速度と角速度からクォータニオンを算出することによってセンサ座標系加速度をグローバル座標系加速度に変換した。グローバル座標系加速度を時間積分し、算出した速度の鉛直成分から、跳び箱運動を助走、踏切準備、踏切、着手、および着地の5つの局面に分けて分析を行った。その結果、跳び箱の段数が高くなるほど踏切板の接地時間が短くなり、鉛直方向の最大速度が大きくなる傾向が見られた。これは、跳び箱の熟練者が踏切板を短い接地時間で踏み切ることで、上方への大きな跳躍力を獲得していたものと考えられる。スマートフォン内蔵センサを利用することで跳び箱運動の技術を定量化することが可能となり、スポーツ指導の現場でも手軽に測定評価が可能となることが示唆された。