第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題口述

日本心血管理学療法学会 一般演題口述
(心血管)04

2016年5月27日(金) 13:40 〜 14:40 第5会場 (札幌コンベンションセンター 2階 201+202)

座長:森沢知之(兵庫医療大学 リハビリテーション学部), 飯田有輝(厚生連海南病院 リハビリテーション科)

[O-HT-04-2] 高齢急性心筋梗塞後患者において,運動耐容能は発症後2年の腎機能変化に影響する

佐藤聡見1, 舟見敬成1, 根田真澄1, 千葉一平1, 本木里奈1, 小野正博2, 永沼和香子2 (1.一般財団法人総合南東北病院リハビリテーション科, 2.一般財団法人総合南東北病院循環器内科)

キーワード:急性心筋梗塞, 腎機能, 運動耐容能

【はじめに,目的】急性心筋梗塞(AMI)や心不全を発症した高齢患者の腎機能変化を長期観察すると,加齢による腎機能低下が心血管疾患発症後さらに惹起されることがしばしば確認される。一方,近年腎保護に対する運動療法や運動習慣の効果に関する報告が増えており,腎臓リハビリテーションとしてその効果への期待が高まっている。しかし,運動療法の重要なアウトカムである運動耐容能と腎保護に関する報告はまだ少なく,特に高齢者,若年者各々の特徴を述べられた先行研究はほとんど見当たらない。本研究の目的は,「高齢,および若年のAMI患者各々において,長期的な腎機能変化に対する運動耐容能,および患者背景因子の影響を検証すること」である。

【方法】対象は,平成24年4月から平成25年10月にAMIにて入院し,経皮的冠動脈形成術(PCI)と入院期心臓リハビリテーションを施行された患者のうち,退院後も当院外来で2年間経過観察が可能であった42名である。うち65歳以上を高齢群(17名,70.4±4.7歳),65歳未満を若年群(25名,55.9±6.8歳)とした。また,本研究における腎機能の指標はe-GFR(mL/分/1.73 m2)を使用した。研究方法は,まず過去診療録より退院時e-GFR(G1),および退院2年後e-GFR(G2)を含む各測定データ(患者背景因子,血液データ,および退院時運動耐容能(心肺運動負荷試験結果))を後方視的に調査した。その後,高齢群,若年群各々において,退院2年後の腎機能変化率(GR)を「 G2/G1×100(%)」と定義し,GRに対する各測定データの影響を多変量解析にて検証した。統計解析にはR2.8.1を使用し,GRを従属変数,各測定データを説明変数としたステップワイズ重回帰分析を実施した。尚,有意水準は5%未満とした。

【結果】e-GFRに関して,G1(mL/分/1.73 m2)は高齢群64.1±19.7,若年群78.2±21.3,G2(mL/分/1.73 m2)は高齢群56.6±18.7,若年群68.2±18.4であった。またGR(%)は高齢群88.6±15.0,若年群88.2±14.2であった。多変量解析結果に関して,高齢群では「退院時Peak VO2」(p=0.012,自由度調整済みR2=0.31)が有意な変数として抽出された。若年群においては,抽出項目は認められなかった。

【結論】本研究結果より,高齢AMI患者において,運動耐容能が発症後の腎機能変化に影響を与える独立因子であることが示唆された。近年,慢性腎不全患者において運動習慣や活動量の担保が腎保護や生命予後に影響するという報告が増えている。特に就労機会の少ない高齢者においては,通院型の回復期リハビリテーション管理が行われない場合,入院期に得られた運動耐容能が退院後の生活範囲や活動量に直結することが多く,今回の研究結果に繋がった可能性は高い。しかし,本研究は運動耐容能の評価が入院期のみに留まり,退院後の運動耐容能変化や実際の生活活動量の変化が腎機能変化に与える影響まで検証できなかったため,今後追跡調査が必要と思われる。