第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題口述

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) 一般演題口述
(基礎)11

2016年5月28日(土) 14:50 〜 15:50 第6会場 (札幌コンベンションセンター 2階 小ホール)

座長:坂本美喜(北里大学 医療衛生学部 理学療法学専攻)

[O-KS-11-4] 乳酸菌R30株摂取による赤血球速度の増加作用と筋萎縮に伴う骨格筋毛細血管の退行抑制

平山佑介1, 中西亮介1, 上野瑞季1, 吉川まどか1, 立垣愛郎2, 前重伯壮1, 藤野英己1 (1.神戸大学大学院保健学研究科, 2.株式会社カネカメディカルデバイス開発研究所)

キーワード:毛細血管, 乳酸菌R30株, 赤血球速度

【はじめに,目的】

不活動による骨格筋萎縮では毛細血管退行が生じる。毛細血管退行は筋持久力を低下させ,運動耐容能の低下を惹起する。一方,毛細血管内の血流増加は毛細血管壁へのシェアストレスの増加により内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS)と血管内皮細胞増殖因子(VEGF)を介した血管新生を誘導する。乳酸菌R30株をラットに摂取させた先行研究では,骨格筋交感神経の活動増加が観察され,血流の増加が期待される。さらに乳酸菌R30株を3週間摂取させた実験では,トレッドミル走行時間の延長が観察された。そこで,本研究では単回の乳酸菌R30株摂取が骨格筋内の血流動態に及ぼす影響を観察すると共に筋萎縮に伴う毛細血管退行に対する効果を検証した。


【方法】

乳酸菌R30株摂取による血流動態を検証するため,雄性SDラットを5匹用いて,人工呼吸管理の下,血圧をモニターし,乳酸菌R30株(500mg/kg),または同量の生理食塩水を無作為な順で経口摂取させた。ペンシル型CCD生体顕微鏡を用いて,骨格筋内の毛細血管を撮影した。撮影した動画は解析ソフトMATLABを用いて,毛細血管を通過する赤血球の速度を測定し,乳酸菌R30株と生理食塩水摂取後の経時的変化を比較した。毛細血管退行に対する継続的な乳酸菌R30株摂取の効果の検証では,新たに雄性SDラットを25匹用いて,生理食塩水摂取群(Saline)と乳酸菌R30株摂取群(R30;500mg/kg/day)に分類した。さらにそれぞれの群を対照群(CON)と2週間の後肢非荷重群(HU)に分け,CON+Saline,CON+R30,HU+Saline,HU+R30の4群に分類した。実験期間終了後,ヒラメ筋を摘出,急速凍結した。凍結した筋サンプルからクライオスタットを用いて薄切切片を作製し,アルカリフォスファターゼ染色で毛細血管を可視化した。顕微鏡画像から毛細血管筋線維比(C/F比)を算出した。また,Western Blot法によりeNOSとVEGFタンパク発現量を測定した。統計処理は二元配置分散分析とTukeyの多重比較検定を用い,有意水準は5%未満とした。


【結果】

乳酸菌R30株の摂取により赤血球速度が増加し,摂取後20分,40分,60分の時点で生理食塩水摂取と比べて有意に高値を示した。毛細血管退行に対する効果の検証では,HU+Saline及びHU+R30のC/F比は各々CON+Saline及びCON+R30と比較して有意に低値を示し,HU+R30はHU+Salineと比較して有意に高値を示した。また,eNOS及びVEGFタンパク発現量は,HU+R30群ではHU+Saline群と比較して有意に高値を示した。


【結論】

継続的に乳酸菌R30株を摂取することで血流量が増加し,eNOS/VEGF経路による血管新生が促進され,筋萎縮に伴う骨格筋毛細血管退行を軽減した。