第52回日本理学療法学術大会

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[P-NV-18] ポスター(神経)P18

2017年5月13日(土) 15:30 〜 16:30 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本神経理学療法学会

[P-NV-18-4] 高齢脳血管障害患者の歩行獲得に関連する因子の調査

長野 文彦, 松岡 達司, 河﨑 靖範, 槌田 義美, 山鹿 眞紀夫 (熊本リハビリテーション病院)

キーワード:高齢, 脳血管障害, 歩行

【はじめに,目的】

脳血管障害(CVA)患者において,歩行の獲得は各患者の生活範囲を拡大させることに繋がり,日常生活動作(ADL)の中でも特に重要な意味を持つ。今回,年齢による影響を考慮し,高齢(65歳以上)のCVA患者を対象として歩行獲得に関連する因子の調査を行いADL向上の一助とする。


【方法】

H26~27年度に当院回復期リハ病棟に入院していた初発の高齢CVA患者で入院時に歩行に介助もしくは見守りを要していた175名の内,入院時より重度の意識障害・高次脳機能障害・認知症のいずれかを有しており指示理解が困難であった63名を除外した,112名(平均年齢78.51±7.11歳,男性54名 女性58名)を対象とした。対象者を,退院時に歩行が自立した者を歩行獲得群(N=58),介助もしくは見守りを要していた者を歩行非獲得群(N=54)として,歩行獲得に関連すると考えられる入院時所見11項目(年齢,診断名,運動・認知FIM,Alb値,認知症高齢者生活自立度,下肢Br.Stage,半側空間無視の有無,整形・循環器・呼吸器疾患の合併症の有無)と,入院中1日あたりに行った起立Exの平均実施回数(起立Ex回数)の計12項目について2群間比較(対応のないt検定,χ2検定)を行った。従属変数を歩行獲得とし,2群間比較にて有意差を認めた項目を独立変数として多重ロジスティック回帰分析を行い,変数選択(変数増加法;尤度比)により歩行獲得に関連する因子を抽出した。統計解析にはSPSS ver21を使用し,有意水準は5%未満とした。


【結果】

2群間比較の結果,年齢(**),運動FIM(*),認知FIM(*),Alb値(*),認知症高齢者生活自立度(*),下肢Br.Stage(*),起立Ex回数(*)の7項目において有意差を認めた(*;P<0.01,**;P<0.05)。多重ロジスティック回帰分析の結果,変数選択により運動FIM(P<0.01,オッズ比1.075),下肢Br.Stage(P<0.05,オッズ比2.353),起立Ex回数(P<0.01,オッズ比1.055)が抽出された。


【結論】

高齢CVA患者の歩行獲得には多くの因子が影響を与えていると考えられるが,有意に関連のある因子として運動FIM,下肢Br.Stage,起立Ex回数が抽出された。歩行獲得に関して,身体機能や下肢の麻痺の程度に加えて,積極的な起立Exの実施が高齢CVA患者の歩行獲得に寄与することが示唆された。脳卒中ガイドライン2009において,起立-着席訓練や歩行訓練などの下肢訓練の量を多くすることは,歩行能力の改善のために強く勧められる(グレードA)とされており,今回の結果は先行研究に基づくものとなった。