第52回日本理学療法学術大会

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[P-NV-28] ポスター(神経)P28

2017年5月14日(日) 11:40 〜 12:40 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本神経理学療法学会

[P-NV-28-2] 脳腫瘍外科的治療後患者の自宅退院に関連する因子の検討

栢本 あずさ1, 眞鍋 朋誉1, 佐藤 克成1, 鄭 伃廷1, 高木 大地1, 柴田 篤志1, 森 友洋1, 岡田 貴士2, 夏目 敦至3, 門野 泉2 (1.名古屋大学医学部附属病院リハビリテーション部, 2.名古屋大学医学部附属病院リハビリテーション科, 3.名古屋大学医学部附属病院脳神経外科)

キーワード:脳腫瘍, 転帰先, Barthel index

【はじめに,目的】

脳腫瘍患者は,病態が進行性であることから介護者が早期自宅退院を望むといった特徴に加え,放射線化学療法などの治療により転院先となる受け入れ病院が少ないことも影響し,脳卒中患者に比べ自宅退院率が高いとされている。しかし,患者数が少ないため,脳腫瘍外科的治療後の患者の転帰先に関する報告は少ない。そこで,本研究の目的は,脳腫瘍外科的治療後の患者の自宅退院に関する退院時の特徴を明らかにすることである。

【方法】

2016年1月から9月に当院にて外科的治療および理学療法を行った脳腫瘍患者のうち,評価が可能であった27例を対象とし,診療記録から後方視的に調査した。調査項目は,年齢,転帰先,在院日数,リハビリテーション介入期間,脳腫瘍の部位と病理学的診断,放射線化学療法の有無,職業の有無,同居者の有無,退院時に評価したBarthel index(以下,BI),Karnofsky Performance Scale(以下,KPS),6分間歩行距離(以下,6MWD),麻痺側下肢のBrunnstrom recovery stage(以下,BS),膝関節伸展筋力,高次脳機能障害の有無とした。転帰先を自宅退院群と転院群の2群に分け,各項目についてMann-WhitneyのU検定およびカイ二乗検定を用いて比較した。統計学的解析では有意水準を5%未満とした。

【結果】

対象者の年齢は55.2±15.5歳,腫瘍の内訳は神経膠腫例9例,星状細胞腫例5例,乏突起膠腫2例,上衣腫1例,髄膜腫4例,神経鞘腫3例,その他3例であった。自宅退院群は15例,転院群は12例であった。転院先は回復期が3例,一般病院が8例,地域包括ケア病棟が1例であった。

自宅退院群は転院群に比べ,在院日数,リハビリテーション介入期間が有意に短く,BI,KPS,6MWD,麻痺側,非麻痺側の膝関節伸展筋力が有意に高値を示した。高次脳機能障害や同居者の有無などのその他の項目では有意差を認めなかった。転帰先と関連を示したBI,KPS,6MWD,麻痺側,非麻痺側の膝伸展筋力を独立変数として抽出し,転帰先を従属変数として,ロジスティック回帰分析を行った。その結果,BI(オッズ比0.93,95%信頼区間0.87-0.99)のみが独立した危険因子として抽出された。

また,BI>80点であった17例を対象に転帰先と各項目を比較検討したところ,自宅退院群で同居者がいる割合が有意に高かった。

【結論】

外科的治療後の脳腫瘍患者における自宅退院に関連する因子には,日常生活動作能力と,歩行能力や膝関節伸展筋力などの身体機能が影響する可能性が示された。

また,脳腫瘍患者は,高次脳機能障害が高率でみられるとされるが,今回の結果より,高次脳機能障害を有していても日常生活動作能力が保たれていれば自宅退院することは可能と考えられる。

一方,日常生活動作能力がある程度保たれていても,独居であることは自宅退院の阻害因子となる可能性があり,社会サービスなどの環境を考慮することも必要であると思われる。