日本昆虫学会第84回大会・第68回日本応用動物昆虫学会大会 合同大会

講演情報

口頭発表

[D] 生理学・生化学・分子生物学

2024年3月31日(日) 09:00 〜 11:30 D会場 (白橿2)

10:45 〜 11:00

[D-41] 蚊で特殊化した弾性クチクラタンパク質レジリンのホモログ

大久保 さくら1、眞宅 統基1、峰 翔太郎1,2、山本 大介3、◯外川 徹1 (1. 日大・文理・生命、2. 農研機構・生物研、3. 自治医大・医動物学)

レジリンは弾性に富んだクチクラタンパク質である。バッタの後脚やトンボの翅の付け根などに見られ,これらの器官が動く際のエネルギーの蓄積や衝撃吸収において重要なはたらきを担う。レジリンはキチン結合ドメインと,弾性発現に重要な繰り返し配列をもつ。レジリン様タンパク質は多くの昆虫から見出されているが,ガンビエハマダラカから報告されているレジリンホモログは特殊な構造的特徴をもつ。このタンパク質はレジリンに相同性の高いキチン結合ドメインをもつが,繰り返し配列をもたない。このタンパク質が蚊で保存されているのか,また蚊には他にレジリンと呼べるタンパク質が存在するのか不明であった。そこでゲノム情報が整備されている複数の完全変態昆虫からレジリンホモログを探索したところ,蚊にはこの特殊化したレジリンホモログが保存されていることが明らかになった。また,このタンパク質は発現解析の結果から聴覚器官であるジョンストン器官で機能することが示唆された。蚊からは明確なレジリンが見出されなかったが,レジリンと同様の繰り返し配列をもつタンパク質が見出され,このタンパク質が蚊ではレジリンとして機能する可能性が示唆された。講演では蚊のレジリンホモログならびにレジリン様タンパク質の進化についても議論したい。