日本昆虫学会第84回大会・第68回日本応用動物昆虫学会大会 合同大会

講演情報

口頭発表

[E] 線虫・ダニ・クモ・脊椎動物

2024年3月30日(土) 09:00 〜 10:00 E会場 (小会議室1)

09:00 〜 09:15

[E-15] 原虫感染マダニにおける卵黄タンパク質前駆体の役割

◯白藤 梨可1、佐藤 成子1、鈴木 宏志1 (1. 帯畜大・原虫研)

マダニ体内における病原体の発育・増殖は、マダニの生命維持と繁殖の付随現象であるが、その分子機構については不明な点が多い。我々はこれまで、フタトゲチマダニが有する3つの卵黄タンパク質前駆体(Vitellogenin;Vg)のうち、脂肪体と卵巣に発現するVg-2が、バベシア属原虫(Babesia ovataBo)の雌ダニ体液中での生存ならびに卵巣への侵入に関与することを明らかにした。今回、中腸に特異的に発現するVg-1について、Bo感染雌ダニにおけるその遺伝子発現と機能の解析を試みた。Bo感染群の中腸におけるVg-1遺伝子発現は、飽血後1日目および2日目において、非感染群に比べ有意に上昇した。次に、RNA干渉法によりVg-1遺伝子発現を抑制し(RNAi群)、Bo感染させ、卵巣およびその他臓器(Carcass; CA)におけるBo遺伝子の検出を行った。RNAi群と対照群間にはBo遺伝子検出率の有意差は無く、一方で、CAにおけるBo遺伝子相対値(RNAi群/対照群)は経日的に増加傾向にあった。これらのことから、Vg-1合成は卵形成だけでなく、Bo感染によっても促進されること、体液中に分泌されたVg-1は、Boの中腸からその他臓器への伝播を負に制御することが推測された。